今さら聞けない給与明細の見方!社会人必見の基本をおさらい。 今さら聞けない給与明細の見方!社会人必見の基本をおさらい。

給与明細の見方、知っていますか?今さら聞けない社会人の基本をFPが解説。

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皆さん、毎月の給与明細をきちんと見ていますか? 最近は紙だけではなくウェブの明細書も多いので、わざわざ見ていないという人も多いかもしれません。銀行に振り込まれる金額だけでなく、税金などを自分がどれだけ支払っているのかも、きちんと把握しておきたいところです。

この記事では、金融教育についての実績が豊富なファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんに給与明細の見方をわかりやすく説明していただきました。「iDeCoを検討したい」「マネープランを立てたい」というときにも、役立つかもしれませんよ。

目次

給与明細って、そもそも何が書かれているの?

●給与明細のイメージ
給与明細って、そもそも何が書かれているの?

給与明細には、勤務した日数や時間、労働の対価として支払われた給与のほか、社会の一員として、自らが支払っている社会保険料や税金なども記載されています。

給与明細は3つの項目で構成されている。

給与明細の様式は会社によって異なります。しかし基本的には上のイメージのとおりで、大きく分けると「1.勤務(勤怠)」「2.支給」「3.控除」の3つの項目で構成されています。

1.勤務(勤怠):勤務した日数や時間
2.支給:会社から支払われる給与の額
3.控除:給与から差し引かれる(控除される)額

給与明細の見方の基本!「手取り」って何のこと?

給与明細の見方の基本!「手取り」って何のこと?

よく「手取り」という言葉を聞きますが、何のことかご存じでしょうか?

手取りとは、支給額から控除額を差し引いた「差引支給額」のこと。すなわち、銀行口座に振り込まれて、実際に自分が手に取ることのできる金額をいいます。

この手取りを月収と認識している人もいるかもしれませんが、月収とは、控除額を差し引く前の「支給額合計」のこと。いわゆる「額面」と言われる金額を指します。

【給与明細の見方1】まずは確認!「勤務(勤怠)」欄の見方。

では、ここからは各項目の詳細を見ていきましょう。まずは「勤務(勤怠)」の欄の見方からです。

勤務(勤怠)の欄には、「労働日数」や「欠勤日数」「有休取得日数」「残業時間」などの勤務状況が記載されます。手取りに影響を与えるので、間違いがないかしっかり確認しましょう。

会社によって異なりますが、勤務(勤怠)の欄に書かれる項目には、以下のようなものがあります。

就業日数 会社が定めた就業日数
労働日数 勤務した日数
欠勤日数 欠勤した日数
有給取得日数 有給休暇を取得した日数
有給休暇残日数 有給休暇の残りの日数
特別休暇日数 会社の定める特別休暇や、慶弔休暇などを取得した日数
労働時間 労働時間(勤務時間から休憩時間を引いた時間)の合計
残業時間 雇用契約で定められた労働時間を超えて働いた時間
深夜時間 労働基準法で定められた深夜22時〜翌5時の間に働いた時間
休日労働時間 労働基準法で定められた休日に働いた時間
遅刻早退時間 遅刻や早退で勤務できなかった時間 

【給与明細の見方2】押さえておきたい「支給」欄の内訳。

次は、「支給」の欄について見ていきましょう。支給の欄には、給与のベースとなる基本給と、残業手当などの各種手当が記載されています。

基本給

基本給とは、給与のベースとなる賃金です。月によって変動する各種手当(残業手当など)と異なり、昇格や降格があった場合を除き、毎月同じ金額が支払われます。この基本給は、ボーナスや退職金の計算の基準にもなります。一般的には、経験・能力・勤続年数・年齢などによって決められます。

各種手当

各種手当は、基本給にプラスして支払われる賃金です。会社によって違いがありますが、以下のような手当が代表的です。

残業手当

雇用契約で定められた労働時間(法定労働時間は1日8時間、週40時間)を超えて働いた「時間外労働」に対して支払われます。法律で、通常の労働時間または労働日の賃金計算額の25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。

計算方法:残業手当=時給(基本給から算出)×割増率(1.25以上)×残業時間

通勤手当

通勤にかかる交通費に対して支給される手当です。電車やバスなら定期代、自動車ならガソリン代が支給されるのが一般的です。月15万円以内なら非課税になります。

参考:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(2016年4月)

資格手当

会社が定める資格を保有している場合、もしくは取得した場合に支払われます。

そのほかの手当

上記以外にも、以下のような手当があります。残業手当以外は法律で義務付けられていないため、項目や支給条件、支給金額は会社によって異なります。

役職手当 役職に応じて支払われる手当
住宅手当 従業員の住宅費負担を補助する趣旨で支払われる手当
家族手当 配偶者や子どもなどの扶養家族がいる場合に支払われる手当
単身赴任手当 単身赴任をしている場合に支払われる手当
地域手当 物価が高い都市部や光熱費がかさむ寒冷地などで勤務している場合に支払われる手当
出張手当 出張した期間や移動距離に応じて支払われる手当
皆勤手当 無遅刻・無欠勤の場合に支払われる手当 

【給与明細の見方3】年齢や給与の額で変化する「控除」欄の内訳。

「控除」の欄には、支給額から差し引かれる社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険)や税金(所得税・住民税)が記載されています。

健康保険

会社員になると、会社が加入している健康保険制度に加入するのが原則(※)です。保険料を毎月支払うことで、病院での医療費が3割負担になるなどのサービスを受けることができます。

保険料は「標準報酬月額(4・5・6月の総支給額の平均)×保険料率」で算出され、給与が増えると保険料も増えます。このうち負担するのは半分で、残りの半分は会社が負担します。給与明細に記載されているのは、自己負担分のみです。

※ 小規模の会社の場合は、国民健康保険の場合もあります。詳しくは会社に確認してください 。

介護保険

介護保険は、高齢者の介護を支えるための保険です。満40歳になった月から自動的に加入します。健康保険と同じく、標準報酬月額に保険料率をかけて算出し、半分を自分が、残りの半分を会社が負担します。40歳になるまでは介護保険料を支払わないので、給与明細は空欄になっています。

厚生年金

厚生年金とは、会社員や公務員が加入する公的な年金制度です。老後に受け取る「老齢厚生年金」、障害を負ったときに受け取る「障害厚生年金」、本人が亡くなったときに遺族が受け取る「遺族厚生年金」があります。保険料は、健康保険と同じく、「標準報酬月額(4・5・6月の総支給額の平均)×保険料率」で算出され、会社と半分ずつ負担します。

雇用保険

雇用保険は、失業したときの生活を安定させるための保険です。実際に失業したときには、「失業給付」を受け取ることができます。また、在職中に条件を満たせば受けられる「教育訓練給付」や、育児休業を取るときに受け取れる「育児休業給付」といった給付金も、雇用保険から支払われます。半分ずつではありませんが、会社と分け合って負担します。

所得税

所得税は、国に納付する税金で、1年間のすべての所得から必要経費や控除額を差し引いた「課税所得」から税額を計算します。所得税や住民税は課税所得をベースに計算されるので、控除額が増えると、実質的な税負担は軽くなります。以下は、控除の例です。

●社会保険料控除(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険などに支払った保険料が全額控除される)
●生命保険料控除(払い込んだ生命保険料に応じて控除額が変わる)
●小規模企業共済等掛金控除(「iDeCo(個人型確定拠出年金)」など対象となる共済制度の掛け金が全額控除される)

以下の所得税の速算表のように、所得が上がるほど、税率も上がります。これを「累進課税」といいます。

●所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁HP タックスアンサー「No.2260 所得税の税率」

所得税の額は、次のように求めることができます。

例:1年間の課税所得が260万円の場合
260万円×0.1-9万7,500円=16万2,500円

所得税の額は本来、1年単位で計算されるものですが、会社員の場合は、現在の月収が続く想定で、毎月、仮の額の所得税が給与から差し引かれています。これを「源泉徴収」といいます。

正確な所得税の額が確定するのは、年末です。多く納付していたことが判明した場合は還付(払い戻し)を受け、不足していた場合は追加で納付します。この精算制度を「年末調整」といいます。

住民税

住民税は、居住地の自治体に納付する税金で、前年の所得に対して課されます。前年の収入がない、もしくは収入が少ない社会人1年目であれば支払う必要がないことが多いです。もし1年目と2年目で所得が変わらなかった場合は、住民税が徴収されるぶん、2年目の手取りのほうが少なくなるということが起こります。

【まとめ】給与明細の見方を知ることは、マネーリテラシーを高める第一歩。

給与明細をよく見てみると、差し引かれる社会保険料や税金が多く、「手取りが少ない!」と感じるかもしれません。

しかし、各項目の内容や関連する制度を知るようになれば、「ふるさと納税をしてみたい」「iDeCoって何だろう?」と税額の控除に関連する制度への興味をもつことにつながりやすくなるのではないでしょうか。

給与明細を読み解くことは、マネーリテラシーを高める第一歩になります。受け取ったら、間違いがないかチェックするだけでなく、情報の内容そのものにも意識を向けてみてください 。

写真/Getty Images イラスト/こつじゆい


豊田 眞弓
FPラウンジ代表。経営誌やマネー誌のライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。個人相談や講演のほか、ウェブサイト・雑誌などに多数のマネーコラムを寄稿。「子どもマネー総合研究会」理事のほか、「親の介護・相続と自分の老後に備える.com」を主宰。亜細亜大学などで非常勤講師も務める。


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C22-076-0207(2023.3.30)
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