お食い初めのやり方を解説!当日の献立や服装、かかる費用を紹介!
赤ちゃんが一生食べ物に困らないようにと願う伝統行事、「お食い初め」。予算や準備など、初めてお食い初めをするママやパパにとって、わからないことも多いはず。
そこで本記事では、お食い初めのもっとも基本的なやり方や考え方を、和文化研究家の三浦康子さんに伺いました。ただし、お食い初めはご家庭や地域により風習が異なるので、1つの例としてご覧ください。
目次
お食い初めってどんな行事?
「お食い初め(百日祝いともいわれる)」とは、生後100日目ごろに赤ちゃんに初めて食べ物を食べさせ、一生食べ物に困らないように家族で願う行事のこと。日本におけるその歴史は古く、平安時代の宮中行事「五十百日之祝儀(いかももかのしゅうぎ)」に由来するとされています。
実際には赤ちゃんはまだ食べ物を食べられない時期なので、赤ちゃんの口元に料理を運んで食べさせる真似をする儀式です。
また、赤ちゃんの歯が生えはじめる時期なので、硬くて丈夫な歯になるよう願いを込める「歯固めの儀式」も行います。
お食い初めを終えて、1歳の誕生日に行われる「一升餅」などお祝いの風習を知りたい場合は次の記事もご覧ください。
生後1か月の行事、お宮参りの準備の進め方などを知りたい場合は次の記事もご覧ください。
お食い初めの予定の立て方。
お食い初めの予定を立てるポイントは「日程」「参加者」「場所」です。お食い初めを行うのは生後100日目ごろとされていますが、ぴったり生後100日である必要はありません。生後100日目に近い、家族が集まりやすい休日などを選びましょう。ママやパパと赤ちゃん、赤ちゃんのきょうだいといった家族で行っても構いませんし、近くに住む祖父母など近しい親族を招待するのも◎。
お食い初めを行う場所は自宅が多いのですが、最近は料亭やレストラン、ホテルなどで行う人も増えています。お店の場合は手軽さがメリットである一方、事前予約が必要なことや決して安くない費用がかかることがデメリットです。
お食い初めの場所によるメリットとデメリット
場所 | メリット | デメリット |
自宅 | ・赤ちゃんが慣れている環境のためリラックスできる ・費用が抑えられる | ・食器や料理の用意が必要 ・掃除や片づけが必要 |
料亭やレストラン、 ホテル | ・食器や料理を用意する手間が不要 ・参加者が集まりやすい場所を選べる | ・費用がかかる ・赤ちゃんにとって初めての環境で緊張する可能性がある ・希望の日程があいていないことも |
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
お食い初めに必要な準備。
自宅でお食い初めを行う場合、祝い膳の準備が必要です。
料理
お食い初めの祝い膳は、一汁三菜が基本です。必ずこのメニューが必要という決まりはありませんが、料理や食材は縁起がよいとされるものを使いましょう。
祝い膳の代表的な献立
ご飯 | ご飯はお赤飯を準備するのが一般的。お赤飯の赤い色は魔よけの色とされている |
汁物 | みそ汁ではなく、より出汁の風味を味わえるお吸い物を。具材には良縁を願う縁起物のはまぐりなど、貝がよく使われる |
魚 | もっともポピュラーなのは祝い事の定番である鯛だが、カナガシラやキンメダイ、スズキなど、地域の名産の魚、縁起がいいとされている魚でも。尾頭付きで塩焼きに |
煮物 | たけのこ(健やかな成長)やれんこん(将来の見通しが利く)、ごぼう(深く根をはり、土台が安定する)など、縁起のいい食材を使う |
あえ物(香の物) | おせち料理の定番である紅白なます(紅白でめでたい)やたこ(多幸)の酢の物など、縁起のいい料理や食材がおすすめ |
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
食器類
祝い膳に使う食器類はできるだけ新しいものを用意します。母方の実家が新しいものを用意するのが習わしですが、ご家庭によっては代々受け継がれているお食い初め用の食器セットがあることも。まずはご両親に相談・確認して、誰が何を用意するかを決めるといいでしょう。
食器
正式には家紋入りの漆塗りのお膳とお椀を用意します。男の子は「朱塗り」、女の子は外側が「黒塗り」、内側が「朱塗り」です。
とはいえ、漆器は高価ですし、今の時代には実用的だとはいえません。必ずしも漆器ではなく、長く使える木製の食器や、離乳食用の食器などで代用してもいいでしょう。
お箸
お箸は「祝い箸」を用意します。「祝い箸」とは、箸の先端が両方とも使えるようになっている両口箸のこと。片方は神さま、もう片方を人が使うと考え、神さまと人が一緒に食事をすることを表しています。
特に柳でできた祝い箸は「家内喜箸(やなぎばし)」とも呼ばれ、縁起がよいとされています。一般的な祝い箸より高価ですが、赤ちゃんのためにと準備するのもいいでしょう。
祝い箸の箸袋には、赤ちゃんの名前を書いておきます。
歯固めの石
子どもの歯が石のように硬く、丈夫になることを願って、祝い膳に添えるのが「歯固めの石」です。歯固めの石は、自分たちの住む地域の氏神さまがまつられている神社かお宮参りをした神社で授けていただいたり、拝借したりするか、河原や海岸などで拾い、きれいに洗って熱湯消毒をして使います。
歯固めの石はあくまでも神社や河原からお借りしたものです。お食い初めの儀式で使用したあとは、もとの場所にお返しするのを忘れないようにしましょう。
赤ちゃんの服装
お食い初めの日に「色直し式」をすることもあります。「色直し式」とは、それまで白い着物を着ていた赤ちゃんが色のついた小袖の着物に着替える儀式で、本来はお食い初めをした日の夜に行われていました。
着物を着ることがほとんどなくなった現代では、小袖を模したロンパースや、色付きのベビー服に着替えさせることがほとんど。お食い初めのあとではなく、最初から衣装を着させていることも多いです。
この際のベビー服は、母方の実家が用意するのが習わしですが、これもご両親と相談して、誰が衣装を用意するのかを決めるといいでしょう。
記念撮影
お宮参りや七五三と同様、お食い初めに記念撮影をするご家庭は少なくありません。スマホや自宅のカメラで撮影するだけなら簡単ですが、せっかくならプロに撮影してほしいという人も多いようです。希望の日時に行えるよう、早めに予約しておきましょう。
お食い初めの費用はどのくらい?
お食い初めにはやはり費用がかかります。儀式を行う場所や招待する人数などによって変わるので、以下を目安として予算を考えましょう。
お食い初めにかかる費用
場所 | 料理 | 赤ちゃん用の食器 | お色直し用のベビー服 | 記念撮影 | |
自宅 | 自分でつくる場合 | 1人3,000円~5,000円程度 ※ 食器なども用意する必要がある | 2,000円~2万円程度 ※ 漆塗りの食器は5万円~10万円以上かかることも | 3,000円~1万5,000円程度 | 5,000円~3万円程度 |
仕出しなどを利用する場合 | 1人5,000円~1万5,000円程度 | ||||
料亭やホテル | 1人5,000円~2万円程度 | 不要 |
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
お食い初めのやり方は?
お食い初めを自宅で行う場合も料亭やホテルで行う場合も、基本的なルールや食べさせる真似をする順番・流れは同じです。お食い初めの儀式のあと、歯固めの儀式を行います。
お食い初めの儀式。
「ご飯→汁物→ご飯→魚→ご飯→汁物」を1つのサイクルとして、口元に料理を運び食べさせる真似を3回繰り返します。魚以外に煮物やあえ物を用意している場合は、2回目以降、「魚」を「煮物」や「あえ物(香の物)」に変えます。
赤ちゃんに料理を食べさせる役目の人を「養い親」といい、赤ちゃんが長寿になるよう願い、親族の年長者にお願いします。男の子には男性、女の子には女性が行うのが一般的です。
養い親が赤ちゃんを抱き、祝い箸を使って赤ちゃんの口元に料理を運び、口につけることなく食べさせる真似をします。本来は養い親がすべて行いますが、最近はあまりしきたりにこだわらず、最初に養い親が食べさせる真似をしたあとは、交代して行うことも。
歯固めの儀式。
歯固めの石は、高坏(たかつき)や敷き紙を敷いた皿にのせておきます。箸の先で歯固めの石に触れ、赤ちゃんの歯が石のように丈夫になるよう願いながら、その箸先を赤ちゃんの歯茎にそっとつけます。昔は歯固めの石を直接歯茎に触れさせていましたが、誤飲防止や衛生面の理由から、箸を使うようになりました。
お食い初めで注意したい点。
お食い初めの予定を立てる前に、覚えておいてほしいポイントや注意点などを紹介します。
こだわりすぎるとお金がかかる。
お食い初めの行事は、料理や食器など、こだわりだすと際限なく費用がかかってきます。そのため、開催場所や招待する人数、当日の料理などは、予算やスケジュールにあわせて決めるとよいでしょう。
料亭やレストラン、ホテルの「お食い初めプラン」などを利用して、自宅外でお食い初めをする場合、準備の手間が省ける一方、希望する日にお店の予約が取れないことも。そして、何より費用がかかります。
自宅で行うにしても、親族を招けばそれだけ食事代がかかるので、それなりには費用がかかります。当日は、お箸だけ祝い箸にしてそのほかは普段のものを利用するかわりに、少し料理を豪華にしてみるなど、予算をみながら、メリハリをつけたプランを考えるといいでしょう。
地域や家庭による文化の違いは柔軟に考える。
お食い初めは地域ごとにさまざまな風習があり、それぞれ呼び方や祝い方が異なることもあります。また、ご家庭ごとに独自のルールを受け継いでいることもあります。
本記事で紹介した手順はお食い初めの基本的なルールですが、「こうしなければいけない」というものではありません。「赤ちゃんの健やかな成長」を願い、地域や世代の違いも柔軟に捉え、みんなが納得できる方法で行いましょう。
お食い初めをするかどうかで迷ったら?
家族のスケジュールが合わなかったり、予算が折り合わなかったりして「お食い初めをやめようかな……」と思うこともあるかもしれません。ただ「やろうかどうか迷っている」なら、「あのときやっておけばよかった」と後悔することのないように、簡易的な形でも構わないのでお食い初めをすることをおすすめします。
何よりも大事なのは赤ちゃんの健やかな成長を願う気持ちです。儀式の内容やルール、伝統にとらわれず、それぞれのご家庭に合ったやり方を選んでくださいね。
家族のすてきな思い出をつくろう。
赤ちゃんの健やかな成長を家族で願うお食い初め。昔ながらの習わしや基本的なルールはあるものの、絶対的なルールはありません。ママやパパ、そして赤ちゃん自身に負担のない形で行いましょう。
お食い初めのほかにも、子どもが成人するまでには祝いごとや行事がたくさんあります。どれも子どもの幸せを願う内容で、思い出に残る楽しい行事である一方、費用がかかることも忘れてはいけません。家族で一生モノの思い出をたくさんつくれるよう、資金面の準備もしておけるといいですね。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
三浦 康子
和文化研究家。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・ウェブ・講演などで活躍中。さまざまな文化プロジェクトに携わり、子育て世代に「行事育」を提唱している。『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、『赤ちゃん・子どものお祝いごとがわかる本』(朝日新聞出版)など著書・監修書多数。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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