保育園の費用はいくら?保育料以外にかかるお金、負担軽減のコツまでFPが解説。
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。
子どもを認可保育所(※)に預けたいと考えているパパやママ。子どもが保育園に入園したら、どんなことにどのくらいの費用がかかるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
0歳~2歳の子どもを預けたいけど、わが家は幼保無償化の対象? 保育料は家庭によって違うらしいけど、どうやって確認したらいい? 保育料以外にどんなことにお金がかかる? 保育料を軽減する方法はないの?
この記事では、そんな保育園の費用に関するあらゆる疑問について、6児の母でもあるファイナンシャル・プランナー(FP)の橋本絵美さんに解説していただきました。
※ 国の基準を満たし、都道府県知事が認可する保育施設。
目次
- 【最初にチェック】幼児教育・保育の無償化とは?
- 【保育料はいくら?】おさえておきたい計算のポイント。
- 【あわせて知りたい】保育料以外にどんな費用がかかる?
- 【保育料負担が軽くなる?】控除の活用方法や、自治体独自の補助も確認!
- 【まとめ】幼保無償化の時期は教育資金の貯めどき!
【最初にチェック】幼児教育・保育の無償化とは?
保育料を知るために、まずおさえておきたいのが「幼児教育・保育の無償化(以下、幼保無償化)」。少子化対策の一環として、子育て家庭の経済的負担の軽減を目的に2019年10月からはじまった制度です。
幼保無償化の内容は、下記の表のとおり。子どもの年齢や利用する施設・サービスによって、無償化の上限額が異なるので必ずチェックしましょう。
幼保無償化の主な内容
施設・サービス | 対象の子ども | 無償化上限となる額 |
認可保育施設(※1) | 3歳児~5歳児クラスの子ども(※2) | すべての利用料 (幼稚園は月額2万5,700円までの利用料) |
0歳児~2歳児クラスの住民税非課税世帯の子ども | すべての利用料 | |
認可外保育施設・サービス(※3) | 3歳児~5歳児クラスの子ども | 月額3万7,000円までの利用料(※4) |
0歳児~2歳児クラスの住民税非課税世帯の子ども | 月額4万2,000円までの利用料(※4) | |
幼稚園の預かり保育 | 3歳児~5歳児クラスの子ども | 利用日数に応じて最大月額1万1,300円までの利用料(※4) |
※1 幼稚園、認可保育所、認定こども園、地域型保育などを指す。
※2 幼稚園は満3歳~が対象となる。
※3 認可外保育施設、自治体独自の認証保育施設、ベビーシッター、ファミリー・サポート・センター事業などを指す。
※4 無償化の対象となるには市町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要あり。
参考:こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」(参照:2024年7月5日)をもとにミラシル編集部で作成
幼保無償化で注意しておきたいのが、保育園の場合、住民税課税世帯で無償化の対象になるのは3歳児クラスに入ってから(満3歳になったあとの4月1日から)ということ。2歳児クラスにいる間にお子さんが3歳になったとしても、次の4月を迎えるまでは無償化の対象にはならないので気をつけましょう。
【保育料はいくら?】おさえておきたい計算のポイント。
総務省統計局の調査結果をもとにミラシル編集部で算出したところ、2歳児1人あたりの認可保育所の平均保育料は月額2万6,861円、年間32万2,332円となりました。
ただし、保育料はお住まいの自治体や世帯所得によって大きく変わるため、平均額はあくまでも目安。いざ入園したときに「思っていた金額と違った!」と慌てないためにも、わが家の保育料はいくらくらいか、事前にチェックしておくことが大切です。
参考:総務省「小売物価統計調査(動向編) 9940 保育園保育料(2歳児)」(2024年)をもとにミラシル編集部で算出
認可保育所の保育料計算、4つのポイント。
認可保育所の場合、正式な保育料は入園決定後に自治体から通知されますが、事前に試算して金額の目安を知ることもできます。保育料の目安を知るために重要な4つのポイントを見ていきましょう。
ポイント1:お住まいの自治体。
認可保育所の保育料は自治体によって異なります。各自治体が所得割課税額の区分ごとの保育料を示す表をホームページに掲載しているので、「〇〇(自治体名) 認可保育所 保育料」などのキーワードで検索し、お住まいの自治体の保育料をチェックしましょう。
ポイント2:世帯所得。
世帯所得とは、共働きであれば、夫婦それぞれの所得の合計額のことを指します。
この世帯所得をもとに算出される住民税の所得割課税額の合計額を、ポイント1で確認した各自治体の保育料の表に当てはめることで、おおよその保育料を把握できます。区分が1つ違うだけで年間の保育料が大きく変わることがあるため、所得割課税額をしっかり確かめましょう。
住民税の所得割課税額は、毎年5月~6月に自治体から直接送付、または勤務先から配布される「住民税決定通知書」で確認できます。「税額控除前所得割額④」の欄をチェックしましょう。
参考:総務省「第三号様式別表(用紙日本産業規格B4)(第二条関係)」をもとにミラシル編集部が作成
「住民税決定通知書」が手元にない、紛失してしまったという人も大丈夫。お住まいの自治体で「課税証明書」を発行してもらえば、所得割課税額を確認できます。
また、保育料は毎年4月と9月に見直しが行われることを覚えておくとよいでしょう。世帯によっては、そのタイミングで保育料が安くなる、もしくは高くなることがあるのです。
これは4月~8月の保育料が、前々年の1月~12月までの所得から算出された住民税をもとに決まるのに対して、9月~翌年3月の保育料は、前年の1月~12月までの所得から算出された住民税で決まるためです。産休・育休取得後に復職された方や、転職された方、および給与額が変わった方は、保育料が変わる可能性があることに注意しましょう。
ポイント3:子どもの人数と年齢。
同じ世帯から2人以上の子どもが保育園などを利用する場合、保育料負担が軽減されます。自治体により軽減額は異なりますが、国の基準では2人目が半額、3人目以降は無料とされています。ただし、年収360万円未満相当世帯では、第1子の年齢は問われません。きょうだいのうち最年長の子どもが第1子となります。
またひとり親家庭の場合も、世帯の所得額によって保育料負担が軽減されることがあります。
ポイント4:保育園を利用する時間。
保育料は、保育園を利用する時間(以下、保育時間)によっても異なります。保育時間は、下の表のように「保育短時間」と「保育標準時間」の2つの区分があり、どちらの区分になるかは、親の就労時間や通勤時間などをもとに各自治体が認定します。
多くの場合、「保育短時間」の保育料は「保育標準時間」の保育料よりも数百円~数千円ほど安く設定されます。
保育時間の2つの区分
保育短時間(※) | 保育標準時間 | |
就労形態 | 主にパートタイム就労を想定 | 主にフルタイム就労を想定 |
施設の利用可能時間 | 最長8時間/日 | 最長11時間/日 |
※ 保育を必要とする理由が就労の場合、「保育短時間」を利用できる保護者の就労時間の下限は、1か月あたり48時間~64時間の範囲で市町村が定める。
参考:こども家庭庁「よくわかる『子ども・子育て支援新制度』」(参照:2024年7月5日)をもとにミラシル編集部が作成
認可外保育所の利用料は?
認可外保育所を選択肢の1つとして検討されているご家庭もあるでしょう。
認可外保育所の利用料は各施設によって異なりますが、目安として2歳児1人あたりの認可外保育施設(※)の全国平均利用料は、月額4万5,494円となっています。
ただし、この金額はあくまでも目安。実際の利用料は施設によって大きく異なるため、利用を検討する際には施設にしっかり料金の確認をすることが大切です。冒頭で説明したように、認可外保育所でも保育の必要性が認定されれば、上限額はあるものの無償化の対象となることも覚えておくとよいでしょう。
※ 事業所内保育施設・ベビーホテル・ベビーシッター事業者を除く。
参考:厚生労働省「令和3年 地域児童福祉事業等調査結果の概況」(2022年)
【あわせて知りたい】保育料以外にどんな費用がかかる?
幼保無償化の対象になるのはあくまでも保育料のみ。保育料以外にどんな費用がかかるのかも見ていきましょう。
保育料以外にかかる費用。
子どもを保育園に預けた場合、保育料以外にかかる費用としては次のようなものが考えられます。
・食材料費
・行事費
・教材費
・日用品や文房具代
・制服代
・通園送迎費(送迎バスを利用する場合)
・延長保育の利用料金
・英語教育や体操教室などのレッスン代
・保護者会にかかるお金
すべての園で必ず上記の費用がかかるわけではありませんが、これらの項目は原則保護者負担とされています。
食材料費は、国が基準として定めた主食費3,000円、副食費4,500円の金額を目安に各施設が実費を徴収するルールとなっています。そのため、食材料費の金額は多くとも7,500円程度と考えておけばよいでしょう。ただし、年収360万円未満相当の世帯は副食費が免除となったり、自治体によっては、独自の補助で保護者負担をさらに減らしていたりする場合もあります。
参考:こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化に伴う食材料費の取扱いの変更について」(2019年)(参照:2024年7月5日)
入園時・在園中にかかる費用。
ここまで、保育料とそれ以外にもかかる主な費用について見てきましたが、入園時や在園中にもこまごまとしたグッズなどをそろえる必要があります。入園時や日々の保育園生活に必要なものとしては、次のようなものが挙げられます。
●入園時に用意するもの
・連絡ノート
・登園バッグ
・バスタオル
・シーツ
・帽子
・靴や上履き(子どもが歩けるようになると必要)
●日々の保育園生活で必要なもの
・エプロン(主に0歳児~1歳児クラスの場合に食事の回数分)
・コップとコップ袋
・着替えの衣類や肌着
・パジャマ
・紙おむつ
・おしりふき
・汚れもの用のビニール袋
このほかにも、園によっては、昼寝用の布団や毛布・防災頭巾・食事用スプーン・箸の用意や、紙おむつの処分費などを保護者が負担する場合もあります。
【保育料負担が軽くなる?】控除の活用方法や、自治体独自の補助も確認!
育児には何かとお金がかかるもの。そのうえ、子どもが保育園に入って保育料やそれ以外にもいろいろな費用がかかるとなれば、毎月の保育料を少しでも軽減できたらうれしいですよね。そこで、ここでは保育料負担を減らすためにできることをご紹介します。
控除の活用で保育料負担が軽減されることも。
「認可保育所の保育料計算、4つのポイント。」で先述したとおり、認可保育所の保育料は課税所得金額から算出される住民税の所得割課税額をもとに決定されます。つまり、課税所得金額を抑えられれば、保育料が下がる可能性があるのです。
課税所得金額を抑えるために利用できるのが所得控除。代表的な所得控除としては次のものがあります。
控除の活用によって保育料が下がる仕組み
生命保険料控除
生命保険や医療保険、学資保険などの保険料を支払っている場合に使えます。会社員の方は勤め先の年末調整の際に、忘れずに申告を行いましょう。
小規模企業共済等掛金控除
iDeCoの掛金や、自営業の方の小規模企業共済の掛金が対象です。会社員の方は勤め先の年末調整の際に、忘れずに申告を行いましょう。
配偶者控除・配偶者特別控除
産休・育休をとって妻の所得が減った年は、夫の所得から配偶者控除を利用できる場合もあります。
ここで重要なのは、出産育児一時金や出産手当金、育児休業給付金は所得には含まれないこと。配偶者の所得が48万円以下なら配偶者控除(※)、48万円超~133万円以下なら配偶者特別控除を利用できます。該当する場合はぜひ利用しましょう。会社員の方は、勤め先の年末調整での申告を忘れずに。
※ 控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合、配偶者控除や配偶者特別控除は利用できません。
医療費控除
1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合などには、医療費控除を利用できます。特に、出産した年は医療費控除の対象となるケースが多いです。医療費控除は会社員の方でも確定申告が必要なことに注意しましょう!
税額控除は保育料の算定には反映されない!
注意しておきたいのは、税額控除は保育料の算定には反映されないこと。住宅借入金等特別控除・寄付金税額控除・配当控除・外国税額控除などが税額控除に該当します。
自治体独自の補助がないかチェック!
自治体によっては、保育料やそれ以外にかかる費用について、独自の補助を行っている場合もあります。「○○(自治体名) 保育料 補助」などのキーワードで検索するか、お住まいの自治体の保育担当窓口などに問い合わせるなどして、最新情報をチェックするのがおすすめです。
【まとめ】幼保無償化の時期は教育資金の貯めどき!
0歳児、1歳児、2歳児クラスでは保育料がかかり、貯蓄をする余裕がないかもしれませんが、幼保無償化によって、満3歳になったあとの4月1日から小学校入学までの3年間は保育料がかからなくなります。この期間は子どもの教育費をはじめとした、将来に備えての資金づくりのチャンス。貯蓄や投資・学資保険などをうまく組み合わせて、保育園費用の準備にも将来の資金づくりにも、早期から計画的に取り組んでいきましょう。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/こつじゆい 税理士監修/渋田 貴正
【監修者】橋本 絵美
はしもとFPコンサルティングオフィス代表。ファイナンシャル・プランナー、お片づけプランナー。慶應義塾大学商学部卒。2男4女を育てるママFP。子どもは宝であり、安心してもう1人子どもを産めるようにサポートしたいという思いからFPとなる。実践にもとづく「貯まる家計のしくみづくり」が好評。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※ 税務の取り扱いについては、2024年7月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。