体がだるいのは筋肉疲労!忙しい人も「ながら」でできるリカバリー方法。
筋肉痛とは違うけど、肩や腰などがなんとなくだるい。それは同じ姿勢を続けることで起きる「筋肉疲労」かもしれません。現代人の多くが悩む筋肉疲労の原因と付き合い方について、骨格筋評論家「バズーカ岡田」の異名を持つ日本体育大学体育学部教授の岡田隆さんに語っていただきました。時間はとれない、でもいますぐ実践できる解消法を知りたい方は必読です。
目次
- 筋肉疲労と筋肉痛は別モノ。
- 筋肉疲労は日常生活でこそ起きる。
- 筋肉疲労を解消する方法。
- 今すぐできる筋肉疲労を解消するストレッチ・マッサージ。
- 生活の土台を整えて筋肉疲労を解消する。
- 【まとめ】筋肉疲労の予防は、自分のライフスタイルに関心を持つことから。
筋肉疲労と筋肉痛は別モノ。
慢性的な「筋肉疲労」と「筋肉痛」は、別モノだけれど連続している部分もある、と考えてください。筋肉疲労は筋肉痛と同じように、筋肉に痛みが生じた状態。数日で治る筋肉痛と違って、慢性化したものが筋肉疲労です。筋肉疲労を理解するために、健康な人が日常生活の中で感じる筋肉の痛みを見てみましょう。
ケガではない筋肉の痛みの種類
(1)急性 | (2)遅発性 | (3)慢性 |
運動中に起こる痛み | 運動後に起こる痛み | 運動の有無に関係なく継続する痛み |
運動中の筋肉の痛みは、運動を止めればすぐになくなります。筋トレなど運動のあとに起こる筋肉痛は、遅発性に分類されます。今回のテーマである筋肉疲労は、特に運動をしていないのに特定の筋肉に重さやだるさなどの違和感が続いている状態で、ここでは(3)慢性に該当します。
筋肉痛と違って、筋肉が成長しない筋肉疲労。
筋肉疲労のメカニズムは、残念ながらまだはっきりとわかっていないんです。筋肉痛は運動で傷ついた筋繊維で起こる炎症や知覚過敏によるものと考えられています。筋肉痛は数日で回復しますが、筋肉疲労は痛みやだるさが継続します。筋肉痛は筋繊維が再生し、回復するときに生じるものですからよいものと捉えてください。筋肉痛は筋肉を成長させますが、筋肉疲労にはそれがありません。
日頃から体を鍛えている人にとって、筋肉が増えない筋肉疲労にメリットはゼロ。さっさと解消したいところでしょう(笑)。
このほかに疲れた脳が「筋肉疲労」を錯覚することがあります。これを中枢性疲労といいます。筋肉自体の疲労とは別に、筋肉を操作する神経系が疲労して、パフォーマンスが低下します。体がだるく感じる現象もそれに近いでしょう。
「筋肉疲労・筋肉痛=乳酸がたまって起きる」わけではない。
以前は乳酸によって遅発性の筋肉痛が引き起こされると考えられていましたが、現在はそうとはいえないことがわかっています。乳酸は筋肉が動いてエネルギーを使った際に生まれる代謝物質で、筋肉はこの乳酸を使ってさらにエネルギーを生み出します。筋肉痛の原因として憎まれていた乳酸は、実は筋肉が働いた証しだったんです。
筋肉疲労は日常生活でこそ起きる。
筋肉疲労の原因は、同じ筋肉をずっと使うことです。長時間同じ姿勢をとり続けるということは、特定の筋肉を酷使し続けるということ。しかも体がゆがんだ状態だと筋肉にかかる負荷は大きくなります。これが慢性的な筋肉の疲労を引き起こし、重さやだるさ、ときにはコリや痛みという症状につながるんですね。日常生活の中で筋肉疲労が起こるシーンには、以下のようなものがあります。
筋肉疲労が起こる日常生活と部位
日常生活のシーン | 筋肉疲労が起こる主な部位 |
長時間のデスクワーク | 首、肩、背中 |
立ち仕事 | ふくらはぎ |
子育て(抱っこ) | 腰、腕 |
ウォーキングやジョギングなどの軽い運動 | ふくらはぎ |
筋肉疲労を解消する方法。
筋肉疲労の解消は、いろいろな筋肉を動かすことが効果的なんです。使い続けていた特定の筋肉からほかの筋肉へと負荷を分散してあげて、また心拍数が上がって血流が増え、筋肉の疲労物質の代謝が促進されます。だるいからと横になるより、筋肉を動かしたほうが楽になります。立ち仕事で脚が疲れている場合、疲れているふくらはぎをもんで血行をよくするだけでもいいでしょう。
放っておいても回復しにくい慢性の筋肉疲労は、早めに気づいて解消することが大切。その日の疲労はその日のうちにリセットすることが、明日の元気をつくります。
今すぐできる筋肉疲労を解消するストレッチ・マッサージ。
仕事や家事の合間にすぐにできる筋肉疲労を解消するストレッチ・マッサージを部位別にご紹介します。だるさを感じる方は、今日からぜひ試してみてください。
【デスクでできる】首の後ろをほぐす。
同じ姿勢で椅子に座っていると、首の後ろ側の筋肉が疲労します。椅子の背もたれを使って首の緊張をほぐすことで、血行を促進します。ポイントは力を抜いて行うこと。頭の重さがちょうどいい重りになるため、首を押し付ける必要はありません。何度か繰り返しましょう。(10秒~15秒くらい)
1:椅子の背もたれに首を乗せ、手で体を支えながら力を抜きます。
2:顔をゆっくり左に動かします。
3:顔をゆっくり右に動かします。
【デスクでできる】背中をほぐして動かす。
同じ姿勢で座っていると背中が丸まってくるため、体幹(背骨)が固まりがち。上半身を前後に動かし、体幹と背骨をほぐします。何回か行うといいでしょう。(10秒~15秒くらい)
こちらはNGな座り方。知らず知らずのうちに、背中が丸まった座り方になってしまいがちです。
1:椅子に浅めに腰掛け、手を腰に置き、背筋を伸ばします。
2:背もたれにつくくらい、背中から頭までを丸めます(後ろ側に体重をかける)。
3:背筋を伸ばすように、胸を張ります(前側に体重をかける)。
【デスクでできる】体の側面をほぐして動かす。
側面をほぐして動かす、横の動きです。数回繰り返しましょう。(10秒~15秒くらい)
1:椅子に深く腰掛け、胸を張り、手を水平に広げます。
2:遠くのものをつかむイメージで、右に体を伸ばします。右側のお尻に体重が乗るので、左側のお尻は浮く感じになります。
3:左側も同じように行います。
慣れるまでは手を伸ばしたほうがやりやすいですが、隣に人がいてぶつかってしまう場合は、このように腕をクロスさせてもOKです。
【テニスボールで】腰をほぐす。
自体重を使ったセルフマッサージです。靴下の中にテニスボールを2つ入れ床に置き、あおむけになって背骨をはさむようにボールを当ててほぐします。(1か所15秒くらい)
靴下の中にテニスボールを2個入れて、2つのボールが離れないように結びます。
1:膝を立ててあおむけになり、背骨をはさむように腰のまわりにテニスボールを置き、刺激を与えます。腕は胸の前でクロス。自分の重みで適度にほぐれます。
2:体をずらしながら、3か所ほどほぐしていきます。
ほぐすのは、テニスボールを当てた位置(写真に示した位置)の3か所です。腰の筋肉がゆるみ、張りが解消されます。
【ゴルフボールで】足裏をほぐす。
硬いゴルフボールを踏むことで足裏の筋肉をほぐし、脚全体の血行改善につなげます。
1:床にゴルフボールを置いて、右足の指の付け根を乗せます。
2:指の付け根からかかとに向かって、ボールを転がすように足を移動させながら刺激を与えます。右足の次は左足も同じように行います。
足裏を内側と外側の2つのエリアに分けて行いましょう。
生活の土台を整えて筋肉疲労を解消する。
筋肉をほぐすだけでなく、毎日の生活の中にも筋肉疲労を予防・解消するヒントがあります。忙しいとついおろそかにしがちなことが、元気な毎日をつくります。
睡眠時間を確保し、眠りの質を上げる。
睡眠環境を整え眠りの質を上げることも、筋肉疲労を改善します。睡眠時間の確保は最強のソリューション。僕はどんなに忙しくても「1日7時間は布団に入る」と決めて生活しています。
現在活躍しているトップアスリートの多くは、睡眠環境の向上に大きな関心を寄せています。読者の皆さんも自分の骨格に合わせたオーダー枕を使う、体に負担が少ないマットレスを使うなどすることで、睡眠の質を上げることができますよ。
入浴の効果を活用する。
毎日の入浴時間も、筋肉疲労の解消に活用できます。短時間のシャワーだけで済ますのはもったいない! 湯船につかって体を温めれば血管が拡張し、筋肉の疲労物質の代謝に貢献できます。第二の心臓といわれるふくらはぎを湯船の中でもむと、翌日すごく楽になりますよ。
体をつくる食事を意識する。
筋肉疲労の解消には、食事も重要です。栄養でまず意識したいのは、筋肉のもとになるタンパク質、それからビタミンとミネラル。また現代人に不足しがちな食物繊維をさまざまな食材から多めにとり、過多になりやすい脂質量を適正化し、オメガ3脂肪酸やMCT(中鎖脂肪酸)に代えるなどもできるとなおいいです。プロテインやサプリメントに頼りきるのではなく、栄養はなるべく自然の食材からとるようにしましょう。
忙しくて料理をする時間がないときは、コンビニで手軽に買える冷凍のフルーツが便利です。ミキサーでプロテインドリンクと混ぜれば、短時間でおいしく栄養が摂取できますよ。野菜やフルーツのジュースもいいですが、果汁100%ではないものもあるので注意が必要です。
私たちの体は細胞の新陳代謝によって24時間、つくり替えられています。夜にまとめてどかんと食べるよりも、朝昼夜で毎食バランスのよい食事をとったほうが疲れない体になります。
【まとめ】筋肉疲労の予防は、自分のライフスタイルに関心を持つことから。
筋肉疲労の予防=健康な生活習慣、といってもいいでしょう。体を鍛えて筋肉が増えれば疲労への耐性が高まり、筋肉疲労も起こしにくくなります。とはいえ「筋トレやジョギングは面倒くさい」「運動する時間がない」という方は多いと思います。
その場合は、食事と睡眠からはじめてみてください。これは生活習慣です。「何を食べて、どう寝るか」は、筋肉をつけたい人だけでなく、元気な日々を過ごしたい人=すべての人にとってもとても重要なこと。身近なことから日々の生活を見直すことで自分の変化に気づき、自己理解を深め、元気な明日をつくる方法も知ることができます。
当たり前のことのように思うかもしれませんが、これこそが、トップアスリートたちが高いパフォーマンスを維持するためにやっていることでもあります。日々の過ごし方に関心を持ちその質を上げていくことで、筋肉疲労と無縁な毎日を送る方が増えてほしいと思います。
体力があって疲れに気づきにくい20代~30代。これはいわば「元気の前借り」みたいなもので、「まだ若いから大丈夫」と油断するのは危険です。そしてそのとき図らずも培ってしまった雑な生活習慣はあとになって大きなダメージとなって襲ってくることがあります。若いうちから自分の体がどういう状態にあるのかを理解する体の教養・リテラシーを高めるようにしましょう。
写真/PIXTA
【監修者】岡田 隆
日本体育大学教授。博士(体育科学)、理学療法士、ボディビルダー、骨格筋評論家/バズーカ岡田。2023WNBFプロボディビル世界選手権プロマスターズ部門優勝。柔道全日本男子チーム体力強化部門長(2016リオ、2021東京五輪)。『世界一細かすぎる筋トレ ストレッチ図鑑』(小学館)など著書累計100万部超。公式YouTubeチャンネル「新・バズーカ岡田チャンネル」など、SNS登録者合計約40万人。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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