飲みすぎで気持ち悪いときの対処法!お酒好き医師に聞く、お酒との上手な付き合い方。
休日に飲みすぎてしまって気持ち悪い。頭はガンガンするし、喉はカラカラ。だるくて起きるのもつらい……。ここまでひどくなくても、似たような経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか? 二日酔いは仕事にも影響しますし、そもそもそんなつらい思いは避けたいもの。
そこで今回は、自身もお酒が好きで肝臓が専門の医師・浅部伸一さんに、お酒との上手な付き合い方について伺いました。お酒で失敗したくない人、お酒を長く楽しみたい人、必読です!
目次
- お酒を飲みすぎたとき、体はどんな状態?
- お酒の適量を知るには?
- 二日酔い防止のためにできること:飲み会中。
- 二日酔い防止のためにできること:飲み会後。
- 二日酔いになってしまったら?
- お酒は酔うためではなく、味わうために適量を楽しもう。
お酒を飲みすぎたとき、体はどんな状態?
適量なら気分がよくなるけれど、飲みすぎると記憶がなくなったり、頭痛や吐き気などの不調を引き起こしたりするお酒。体の中では、一体何が起きているのでしょうか。
酔って記憶がなくなる理由。
――お酒をたくさん飲むと普段の自分とはだいぶ違った状態になりますよね。そもそも“酔う”ってどういうことなのでしょうか。
一言で言えば、“酔う”とは脳がアルコールで麻痺している状態のことです。人の脳には、“血液脳関門”と呼ばれるしくみがあり、血液中の有害物質が脳内に入ってくるのをブロックしています。しかしアルコールには、この“関所”をくぐり抜けてしまうという特徴があります。
抗生物質など多くの水溶性の薬物やタンパク質などは、血液脳関門でブロックされます。一方、アルコールは水にも油にもよく溶けるという性質をもつため、関門を通過し、“脂の塊”である脳神経細胞の中に効率よく入り込むのです。脳に入り込んだアルコールは神経細胞の働きを阻害し、一種の麻酔薬のように作用します。
――なるほど、“麻痺”ですか。
アルコール摂取量が増えると、麻痺は次第に脳の深部に広がっていきます。運動を司る小脳にまで麻痺が広がると、いわゆる“千鳥足”になります。
記憶の中枢である海馬が麻痺すると、新たな記憶を一時保管する短期記憶の機能が働かなくなります。飲み会のあと、どうやって自宅に帰ったか覚えていない、なんてことがあるのはこのためです。自宅への帰り道は長期記憶で覚えていても、新しい記憶が保存されないため、どう帰ったのか覚えていないのです。
お酒を飲むと顔が赤くなる理由。
――お酒を飲んで気持ち悪くなったり顔が赤くなったりするのは、なぜなのでしょうか。
それはアセトアルデヒドという成分が原因ですね。摂取されたアルコールは肝臓で分解され、脱水素酵素などの働きで最終的に水と二酸化炭素になります。しかし、代謝の過程でアセトアルデヒドが生まれます。
アセトアルデヒドは毒性の強い物質で、血中濃度が高まると吐き気・胃痛・胃もたれ・眠気などの症状が現れます。血管を拡張する作用もあるため、偏頭痛と同じようなしくみで頭痛を起こします。顔が赤くなるのも血管の拡張作用のためです。
そして、過度に酔ってしまう根本的な原因は“飲みすぎ”。つまり、肝臓がアルコールを処理しきれなくなることが原因ですね。
お酒の適量を知るには?
――やはり、自分にとってのお酒の適量を知らなくてはいけないんですね……。知る方法はあるのでしょうか。
一般的に肝臓のアルコール処理能力は、体が大きいほど高く、女性より男性のほうが高いと考えられています。「体重50kgの人が1時間に処理できるアルコールは5g」という目安もあります。
「アルコール5g」といってもピンとこない方もいるかと思いますが、「ビール中瓶1本または日本酒1合でアルコール約20g」というと、量をイメージしやすいかもしれません。
ただし、これはあくまで目安。しかもアルコールの処理能力は、個人差が非常に大きいもの。
定期的にお酒を飲み続けると肝臓の処理能力は高まり、最初はあまり飲めなかった人も少しずつ飲めるようになることがありますが、逆に飲まなくなると低下します。
体調によっても適量は変わるので、飲酒の経験を重ねながら、自分の適量を少しずつ把握していくことが大切です。
二日酔い防止のためにできること:飲み会中。
少しでも二日酔いを抑えるヒントを、飲み会中、飲み会後に分けて浅部さんにご紹介いただきました。まずは、飲み会中にできる防止策から。
チーズや枝豆などを最初に食べる。
空きっ腹で飲むと、お酒は胃を素通りしてすぐに小腸に達して吸収され、血中アルコール濃度を一気に高めてしまいます。
それを予防するために、チーズや枝豆など、消化に時間のかかるタンパク質や脂肪分を含んだ固形の食べ物を、最初に少し食べましょう。それらを消化するために胃の出口が閉まるので、アルコールの主な吸収場所である小腸に、アルコールが少しずついくようになります。
水を十分に摂る。
水とアルコールを1対1で摂取すると理想的です。
「お酒にも水分が入っているのに、なぜわざわざ水を?」と思うかもしれませんが、アルコールには強い利尿作用があるため、排尿によって体から水分がどんどん失われます。アルコールの分解にも水が必要なので、意図的に水を飲まないといけないわけです。
飲み会の場では、ソフトドリンクを間にはさむのがおすすめです。カフェインにも利尿作用があるので、緑茶や紅茶などは避け、比較的カフェインの少ないウーロン茶などを飲むのがよいでしょう。ソフトドリンクをはさむことで、摂取するアルコールの総量も減らせます。
二日酔い防止のためにできること:飲み会後。
飲んだあとに肝心なのは、なんといっても脱水を防ぐこと。アルコールの分解には水が必要なので、脱水状態になるとアルコールの処理も滞ります。
また、吐き気やだるさなど、二日酔いの症状の一因にもなります。帰宅したら意識して水分を摂取し、翌日に備えましょう。
帰宅してすぐに寝てしまうと、水分を補給できません。飲み終わってから寝るまでに、しばらく時間を空けられるよう、なるべく適切な時間で切り上げることも大事ですね。
また、アルコールの代謝にはアミノ酸やビタミンB類も必要なので、これらをサプリメントや栄養ドリンクで摂るのもおすすめです。しじみなどもよいのですが、時として鉄分を多く含むことがあり、摂取しすぎると肝臓に悪影響をおよぼす可能性があるため、摂りすぎに注意が必要です。
ちなみにウコンは、抗炎症作用があり、二日酔いの症状を和らげてくれる可能性がありますが、アルコールの分解を早める効果はあまり期待できません。
二日酔いになってしまったら?
――飲みすぎないよう気をつけていても、ついつい飲みすぎてしまって二日酔いになってしまったときは、どうすればよいでしょうか。
そんなときにはまず反省しつつ、自分が昨日どれだけ飲んだかを振り返り、今後の飲酒量の参考にしましょう。
つらい二日酔いへの対処法を下の表にまとめました。これらを試して、効果があるか様子をみてください。
水分を摂る | •飲料からでも食料からでもよいので、とにかく水分を補給(少しずつ飲むのがコツ) ※二日酔いの朝も、体の中は脱水状態 |
糖分を摂る | •何も食べる気にならなくても、ジュースなどで糖分を補給 ※血糖値の低下がだるさや疲労感を招くことも |
吐き気がひどいときにすること | •とにかく水分を補給 •吐き気が強くて水すら飲めないときは、病院で点滴(脱水症状の改善に即効性あり) |
頭痛や胃痛がひどいときにすること | •市販の頭痛薬や胃薬などを服用して痛みなどの症状を緩和しつつ、体内のアルコールが代謝されるのを待つ |
お酒は酔うためではなく、味わうために適量を楽しもう。
お酒と楽しく、長く付き合うために一番大事なポイントは、繰り返しになりますが、自分の適量で飲むこと。
肝臓に負担をかけすぎると、肝硬変や脂肪肝、アルコール性肝障害などの肝臓疾患を引き起こす可能性があります。長い間お酒と付き合うためにも、お酒は酔うためではなく、味わうために飲むことをおすすめします。最近増えてきた低アルコール飲料も、体に負担をかけにくいのでおすすめです。
最近の研究では、お酒はけっして“百薬の長”とは言えないということも判明しています。自分の適量を見つけ、くれぐれも飲みすぎないでくださいね。
写真/Getty Images
浅部 伸一
東京大学医学部卒業。国立がん研究センターで肝炎ウイルス研究に従事後、自治医科大学を経て、アメリカ・サンディエゴに留学。現在は医薬品開発企業「メドペイス・ジャパン」に在籍。自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科非常勤講師も務める。『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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