献立診断で賢く食費の節約 管理栄養士おすすめのおいしい「節約レシピ」も紹介。
家計のことを考えると頭をよぎる「節約」の2文字。なかでも最初に思い浮かぶのが、すぐにはじめることができて効果もわかりやすい「食費」の節約ではないでしょうか。しかし、一方で「節約にこだわりすぎると、栄養バランスが崩れるのでは?」という不安もあります。
そこで今回は、「節約も栄養バランスも両立したい!」と、日々買い物や料理に奮闘するミラシル読者2人の献立を、栄養のプロである渥美まゆ美先生が診断! 2人のリアルな食事をチェックしながら、食費の節約と栄養バランスを両立させるためのコツや、それにぴったりな節約レシピも紹介します。
今回、献立診断をしてくれる管理栄養士は、TVやメディアでもおなじみの渥美まゆ美先生。簡単・おいしい・栄養もしっかり摂れると三拍子そろったレシピが人気です。
1人目の相談者は、若葉りなさん。夫と16歳の娘の3人家族。
若葉: 13年前に家を購入したのをきっかけに、食費の節約を心がけるようになりました。買い物に行くときは、割引がはじまる夕方の時間帯にしたり、おつとめ品をチェックしたりしています。料理のレパートリーが少なくて、つい同じ食材や調理法を選びがちなのが悩みです。
2人目の相談者は、にこなほさん。夫と5歳の双子(男の子)の4人家族。
にこなほ:5年前に双子が生まれて、教育費などをきちんと貯蓄していきたいと思って食費を見直しはじめました。買い物に行くときはあえて献立は決めず、お店で安くなっている食材を中心にメニューを組み立てるようにしています。なるべく1食が3品以上になるように献立を考えていますが、栄養バランスのいいメニューになっているのか不安です。
さっそく診断スタート。2人のリアルな献立をチェック!
1日目 | 2日目 | 3日目 | |
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朝 | 食べた時間 6:00 | 食べた時間 6:00 | 食べた時間 6:00 |
食パン、ヨーグルト、バナナ、コーヒー | 食パン、ヨーグルト、バナナ、コーヒー | 食パン、ヨーグルト、バナナ、コーヒー | |
昼 | 食べた時間 不明 | なし | なし |
飲むヨーグルト | ※時間が取れず昼食抜き | ※時間が取れず昼食抜き | |
夜 | 食べた時間 21:00 | 食べた時間 21:00 | 食べた時間 22:00 |
豆腐、ひじき入りハンバーグ、トマトきゅうり、レタスの和風サラダ | しゅうまい、豆腐、納豆、ポテトサラダ、豚汁 | クリームシチュー、ひじき炊き込みごはん、冷や奴 | |
間食 | なし | なし | なし |
渥美:豆腐や納豆、ヨーグルトなどで、たんぱく質はしっかり摂れていますね。ただ、全体的にボリュームが少なめなことと、噛みごたえのある食材が少ないのが少し気になります。きちんと咀嚼することは、脳への刺激や血流増進、口腔の健康維持などのために重要なので、噛みごたえがあってエネルギー源にもなる食材をプラスするといいと思います。ちなみに、お昼を食べる時間を取るのは難しそうですか? 朝が早く夜は遅めなので、お昼にエネルギーを補給しないとガス欠にならないか心配です。
若葉:私はヨガインストラクターをしていて、朝から夜までレッスンが入っているので、お昼ごはんを食べるタイミングがないんです。
渥美:人前で体を動かすお仕事でしたら、なおさら、「長時間食べない状態をつくらない」ようにすることをおすすめします。食事のリズムやバランスが整うと、今より代謝がよくなって体づくりに役立ちますし、エイジング対策にも効果を発揮しやすいですよ。たとえば、果物を数切れでもいいのですが、いかがでしょうか?
若葉:それならできそうです!
にこなほ:私も、お昼はつい簡単に済ませてしまっているので、反省です(苦笑)。
渥美:では、にこなほさんの献立も見てみましょう。
2人に共通して不足していたのは「緑黄色野菜」。
1日目 | 2日目 | 3日目 | |
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朝 | 食べた時間 7:00 | 食べた時間 7:00 | 食べた時間 7:00 |
たまごサンド、バナナヨーグルト、コーヒー | 昆布のおにぎり、味噌汁、みかん | ジャムトースト、ポタージュ、キウイヨーグルト | |
昼 | 食べた時間 14:00 | 食べた時間 14:00 | 食べた時間 不明 |
鶏からおにぎり、煮物 | フルーツデニッシュ、くるみパン、カフェラテ | ベーコンほうれん草のパスタ | |
夜 | 食べた時間 21:00 | 食べた時間 21:00 | 食べた時間 21:00 |
鮭と野菜のバター焼き、かぼちゃシチュー、もやしとトマトのナムル | 包まない白菜餃子、こんにゃくとさつま揚げの炒め煮、キムチ冷や奴、大根とわかめの味噌汁 | 白菜と春雨のうま煮卵とじ、こんにゃくとさつま揚げの炒め煮、切り干し大根ときゅうりのマヨサラダ、豆腐とねぎの味噌汁 | |
間食 | 食べた時間 15:00 | 食べた時間 15:00 | 食べた時間 15:00 |
チョコレート系お菓子 | スナック菓子 | 焼き芋、おせんべい |
渥美:夜は、かぼちゃや白菜といった旬の野菜、鮭や豆腐といったたんぱく質などがバランスよく摂れていて、とてもいいですね。朝と昼の栄養バランスも、ここまで完璧でなくていいので、もう少しだけ意識してみましょうか。これから育ち盛りを迎えるお子さんがいらっしゃるので、特に朝食をボリュームアップしていただきたいですね。食事量と活動量が増える時期に重要なのは、朝食の量ですから。
にこなほ:たとえば、今の朝食に何を足せばいいですか?
渥美:卵やヨーグルトなどでたんぱく質は足りているので、緑黄色野菜をおすすめします。にこなほさんだけでなく若葉さんも、とにかく緑黄色野菜が少ないので、ぜひ追加してほしいですね。
若葉:緑黄色野菜は、どういう点がおすすめなんですか?
渥美:緑黄色野菜は、淡色の野菜に比べてカロテンやビタミンCといったビタミン類やミネラルなどの栄養素が豊富です。さまざまな彩りの野菜を食べると、ポリフェノールなども摂ることができます。ポリフェノールは、生活習慣病の一因といわれる活性酸素から体を守る抗酸化作用が期待できることで注目されていますよね。ブロッコリーや小松菜、ほうれん草、トマトやパプリカ、ピーマンなどたくさんの種類があるので、取り入れやすいものを食べてみるといいと思います。
にこなほ:そういえば、ピーマンは安くなる夏によく食べていました。でも、冬だと白菜やキャベツを丸ごと買って、使いきるまでそればかり食べてしまうので、野菜の種類や色までは考えていなかったです。
渥美:旬の食材は、栄養成分をたっぷり含んでいて価格もお手頃なものが多く、食卓のマンネリ化も防ぐと一石三鳥ですから、今の食事のようにぜひ取り入れ続けてください。そして、白菜やキャベツといった淡色野菜にも大事な栄養素が含まれているので、緑黄色野菜か淡色野菜「どちらか」ではなく、「どちらも」摂るのが理想です。1食につき、生野菜なら両手1杯分、加熱した野菜なら片手1杯分が目安の量といわれているので、一度ご自身の手に乗せて適量を把握してみるといいですよ。
栄養成分が豊富な緑黄色野菜やフルーツをお手頃価格&手軽に取り入れるコツ。
若葉:緑黄色野菜は調理方法に悩んでしまうことがあります。よく「ビタミンCは熱に弱い」と聞きますが、野菜は、なるべく生で食べるほうがいいんでしょうか?
渥美:緑黄色野菜は生では食べづらいものも多いので、加熱しても大丈夫です。ただ、ビタミンCについては、加熱に弱く、光や空気の影響を受けやすい、水に溶けやすいといった性質があるので、たとえばビタミンCが豊富なほうれん草は、買ってきたら早めに食べるか、食べきれない分は短時間でさっとゆでて冷凍しておくのがベスト。そのまま冷蔵庫にしまっておくと、1日ごとにビタミンCの残存量が減っていきます。
にこなほ:冷蔵庫に入れて安心していちゃダメなんですね。すぐゆでるようにします!
若葉:でも、「早く調理しなくちゃ」というプレッシャーにずっと悩まされそう(笑)。あと、忙しいときは調理を忘れてしまわないかも不安です。
渥美:そんなときの味方が冷凍野菜です。現代は、瞬間冷凍などの技術が発達して栄養分もキープされているものが多く、調理も保存もしやすくて便利ですよ。さほど高価でもなく、下ごしらえの手間も省けますし、フレッシュな野菜にこだわりすぎなくても大丈夫ですよ。
にこなほ:食費の節約というと、食材の安さや上手に使い回すことに目がいきがちでしたが、いかに上手に栄養を取り入れるかも大事なポイントなんですね。せっかく安く買っても、放置して栄養素を減らしてしまったり、成分を壊すような調理ばかりしていたら意味がないですものね。
渥美:そうなんです。必要な栄養を摂ると、肌の調子が整ったり、病気にかかりにくくなったりして不要な出費が抑えられるので、結果的に大きな節約につながると思いますよ。お手頃価格で手軽に調理できる冷凍野菜の活用は、仕事や家事で毎日忙しいお二人には特におすすめです。
にこなほ:子どもたちがなかなか野菜を食べてくれないときは、どうしたらいいですか?
渥美:細かく刻んだり、サンドイッチやハンバーグの具に混ぜ込んだりして食べやすくするか、フルーツで代用しましょう。食物繊維が豊富なオレンジやキウイのほか、ビタミンCの宝庫であるイチゴもおすすめです。もちろん冷凍でもいいですよ。
管理栄養士直伝の、冷凍野菜を使った簡単&おいしい料理をご紹介。
渥美:では、お二人におすすめの料理をご提案するので、よかったら一緒につくってみましょう。野菜と同時に食事のボリュームも少し増やしたい若葉さんには、手軽に調理できて適度に噛みごたえもあるオートミールを使ったレシピをご紹介しますね。
若葉:実は初めてオートミールを調理するんですが、どんな種類を選ぶといいですか?
渥美:「クイックオーツ」という平たくつぶして細かくカットしたタイプを選ぶと短時間で調理できますよ。この「中華風オートミール卵がゆ」は、電子レンジだけで調理できますし、この1品で炭水化物・たんぱく質・緑黄色野菜が同時に摂れるので、時間がないときの食事にも最適ですよ。ほかにも、「オーバーナイトオーツ」も手軽につくれます。今回は、豆乳で一晩戻したオートミールにフルーツをのせました。水や牛乳、豆乳で戻すのが一般的ですが、甘酒でもいいですし、お好みでハチミツを足してもいいですね。
若葉:甘酒バージョンもおいしそうですね! つくり方も本当に簡単で、すぐ覚えられそうです。
渥美:にこなほさんには、たっぷり緑黄色野菜を食べられる「ブロッコリーとパプリカのホットツナサラダ」をご紹介します。
渥美:このホットサラダも電子レンジだけで調理できるので、忙しいときでもつくりやすいですし、思い立ったときにすぐちょい足しできますよ。
にこなほ:本当に簡単にできますね! 食べるのが楽しみです。
若葉:これもおいしそう! つくり方を撮ってもいいですか?
渥美:もちろんです! 若葉さんにもおすすめの1品なので、ぜひつくってみてくださいね。料理ができあがったら試食してみましょうか。
たんぱく質+緑黄色野菜の合わせ技で元気で丈夫な体づくりを。乾物も常備して。
にこなほ:ビタミンカラーのサラダは、丁寧につくった感じもしますし、なんだかおしゃれで気分が上がります(笑)。しかも、おいしい! 冷凍ブロッコリーもちょうどいい歯ごたえで、こんなに簡単に野菜が調理できるなら、すぐ取り入れられそうです。
若葉:オートミールの卵がゆも、鶏のうまみがしっかり出ていて電子レンジで温めただけとは思えない味ですね! 初めてオートミールを食べましたが、これなら朝でも手軽にできそうです。オーバーナイトオーツは、ぜひフルーツと一緒に食べたいです。
渥美:ビタミンCは、体内に長時間留めておくことができず、朝摂っても夕方には足りなくなりがちなので、ぜひお昼に補充することをおすすめします。
にこなほ:ホットサラダも卵がゆも、手軽でおいしいだけじゃなくて、たんぱく質と緑黄色野菜が一度に摂れるんですね。
渥美:そこも重要なポイントです。たんぱく質は血や筋肉の源といわれていますが、体の中で血や肉に変えるための「代謝」を行うには、野菜などに含まれるビタミンやミネラルが必要なので、両方を合わせて摂るといいんです。お二人のふだんの食事では、たんぱく質は足りていますから、たとえばミニトマトを2、3粒でもいいので緑黄色野菜をプラスしてみてくださいね。
あと、今回のレシピでは使いませんでしたが、栄養バランスが整う節約レシピには「乾物」も頼もしい味方です。食物繊維が豊富で料理もボリュームアップでき、長期保存ができるのでまとめ買いもOKと、大活躍の食材です。お二人とも、ひじきやわかめ、切り干し大根などですでに取り入れてらっしゃったので、ぜひそのまま続けてみてくださいね。
にこなほ:ちなみに、これから子どもたちが肉や魚を食べたがる年頃になると思うのですが、リーズナブルで栄養のあるおすすめ食材はありますか?
渥美:肉も魚もいろいろな種類を食べるようにすれば、何でもおすすめです。肉や魚の選び方で避けたいのは、鶏肉だけ、豚肉だけと「偏る」こと。種類も部位もバランスよく取り入れてください。魚は3日に1回は食べてほしいですが、お手頃価格のものが見つからないときは、缶詰を活用するといいですよ。
若葉:食費を節約するには、手間が増えたり同じ料理が続いたりするのもやむを得ないと思っていたところもありましたが、冷凍野菜やフルーツを活用すれば、こんなにおいしく手軽にさまざまな料理ができるとわかりました。ふだん食べていた節約食材でも、体をつくるたんぱく質は十分摂れているとわかったのも収穫です。
にこなほ:私は、いかに効率的に栄養を摂るかが、食費節約の本当のキモだとわかって目からウロコでした。でも、これまで実践してきた節約の工夫が間違っていなかったことがわかってよかったです! 今回教えていただいた簡単でリーズナブルなレシピを参考にしながら、子どもたちも私も元気な体をつくれる食事を目指したいです。
取材・文/知井恵理 写真/青木加代子
渥美まゆ美
管理栄養士・フードコーディネーター・健康運動指導士
1974年、千葉県生まれ。株式会社Smile meal代表取締役。保育園勤務時に身につけた離乳食・乳幼児食・アレルギー食の知識を生かしてフードコーディネーターへ転職。健保組合、大手料理教室講師を経て、2016年に会社を設立。TVや雑誌など幅広いメディアで活躍。企業のメニュー・商品開発も多く手がけ、「美味しく食べて健康に」をモットーに、食を通した健康的な体づくりのサポートを得意とする。『世界一ラクチンな栄養ごはん』(西東社)など著書多数。
※ この記事は、ミラシル編集部が管理栄養士、面談者への取材をもとに、制作したものです。
※ 面談中の意見や提案は個人の経験に基づく情報も含まれます。
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