ピロリ菌の増殖をおさえるのに悪い食べ物・いい食べ物は?【医師監修】
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胃がんの大きな原因となるピロリ菌。衛生環境が整備された現代の日本では、年々感染率は低下していますが、ゼロではありません。もしピロリ菌に感染していた場合、どうすればいいのでしょうか。ピロリ菌の増殖をおさえるのに悪い食べ物・いい食べ物はあるのでしょうか。
ピロリ菌と胃の不調や胃がんとの関係、食べ物とのかかわりについて、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・北山大祐先生に教えてもらいました。
目次
- ピロリ菌ってどんなもの?
- ピロリ菌の診断と治療。
- 増殖をおさえるのに悪い食べ物。
- 増殖をおさえるのにいい食べ物。
- ピロリ菌感染と胃がんの関係。
- ピロリ菌検査と除菌が胃がんを防ぐ。
- 医療保険なら4日~7日程度の入院に備えられる。
- 【まとめ】健康への備えは、若いうちから。
ピロリ菌ってどんなもの?
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃粘膜に生息する細菌です。胃炎や胃十二指腸潰瘍などさまざまな病気を発症させる可能性がありますが、特に胃がんの大きな原因となることで有名です。
胃の内部は強い酸性であることから、細菌は生息できないと長い間考えられていましたが、1982年にピロリ菌が発見されて以降、さまざまなことがわかってきました。
ピロリ菌に感染するとどうなる?
ピロリ菌に感染すると、ピロリ菌が胃粘膜の中で増殖します。感染しても多くの人は無症状です。しかし、感染による炎症が続くと、慢性的な胃粘膜の萎縮が進み、胃酸の分泌が減少。その結果、消化不良・胃の痛み・胃の不快感といった症状が現れることも。
また、ピロリ菌に感染すると、感染していない人と比較して胃がんの発生リスクが10倍以上になると報告されています。
ピロリ菌は人から人へと感染する?
ピロリ菌は便・唾液・歯垢などから見つかるため、人から人へと感染すると考えられます。人から人への感染経路は明らかではないものの、乳幼児期の食べ物の口移しや、排便後によく手を洗わないといったことが原因だと推測されています。成人してからの感染は、まれとされています。
ピロリ菌の診断と治療。
ピロリ菌に感染しても、治療で除菌することができます。
ピロリ菌の診断。
ピロリ菌に感染しているかどうかの診断は、「血液検査」「尿・便の検査」「呼気試験(息を吐いて行う検査)」で行います。
また、胃内視鏡検査を行い、胃の内部を直接見て確認することで、不調の原因と治療方針が明確になり、患者さんのさらなる安心につながるでしょう。
ピロリ菌の治療。
ピロリ菌に感染していた場合、抗菌薬2種類と胃酸の分泌をおさえる薬の、計3種類の薬が処方されます。一定期間服用したあと、ピロリ菌が除菌できたかどうかを検査します。
増殖をおさえるのに悪い食べ物。
「もしかしてピロリ菌に感染しているかも……」と思いつつ、忙しくて検査を受けられていない人もいるかと思います。検査や治療を行うまでに、「せめてピロリ菌の増殖をおさえるのに悪い食べ物は避けよう」と思うこともあるかもしれませんが、「絶対に食べてはいけないもの」は特にありません。
ただ、胃の健康という一般的な話でいえば、脂っこいものや塩分の強いもののとりすぎはやはり胃に負担をかけてしまうので、注意しましょう。
増殖をおさえるのにいい食べ物。
一部のビフィズス菌が含まれるヨーグルトや、マヌカハニーなどのはちみつ、香辛料であるシナモン、緑茶などには、胃粘膜内に生息するピロリ菌の活動や増殖をおさえる静菌作用があるとされています。
ただ、あくまでも「静菌」であるため、胃の中のピロリ菌をなくす「除菌」ができるわけではありません。前述のように、ピロリ菌の除菌には服薬による治療が必要です。これらの食べ物は、「食べて損はしない」程度に捉えておくとよいでしょう。
ピロリ菌感染と胃がんの関係。
胃がんの大きな原因はピロリ菌のため、近年、ピロリ菌感染が減ることで胃がんも減りつつあります。
ピロリ菌は、年齢が高いほど感染率が高くなっています。ピロリ菌が自然環境から人間に感染する経路ははっきりしていませんが、飲み水が大きな原因であると考えられています。幼少期に井戸水を飲んでいた世代では感染率が高いですが、上下水道が整備され清潔な環境が整えられたことで、若い世代ほどピロリ菌の感染者数は減少しています。
出典:厚生労働省「ヘリコバクター・ピロリ除菌の保険適用による胃がん減少効果の検証について」(2017年)
ピロリ菌検査と除菌が胃がんを防ぐ。
ピロリ菌に感染した人が40代になると、胃がんのリスクが上がります。早期に感染を発見し、感染していた場合は、除菌治療することが胃がんの予防に役立ちます。
症状がなくともピロリ菌検査を受けたほうがいい?
日本人のピロリ菌感染率は減ってきてはいるものの、ゼロではありません。症状がなくとも、「家族がピロリ菌に感染したことがある」「上下水道の整備されていない海外で暮らしたことがある」といった人は、早めにピロリ菌の検査を受けておくと安心でしょう。
1回で除菌が成功しないこともある?
ピロリ菌は、プロトンポンプ阻害薬という薬の服用により高い確率で除菌できます。その確率は、1回目で約90%(2015年以降、新しいプロトンポンプ阻害薬が使用されるようになってから、除菌成功率が従来と比較して向上)、2回目で約95%です。つまり、2回目までの除菌治療で、95%以上の人が成功します。
一方で、抗生剤に耐性を持つピロリ菌の場合などは、違う種類の薬を服用する3回目、4回目の除菌が必要になりますが、3回目以降は保険診療の対象外となります。
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
胃がんになったときの手術は?
ピロリ菌の感染率の減少や意識の高まりによる早期発見の増加で、胃がんの手術件数も減っています。10年~15年前と異なり、現在の胃がん手術は、患者さんの体に負担が少なく入院日数が短くすむ方法が主流です。
胃粘膜内に発生した早期胃がんであれば、胃内視鏡で病変を見ながらがん組織を切除する内視鏡治療になります。胃がんの組織が粘膜から深く入り込み、内視鏡で切除しきれない場合は腹腔鏡下手術になることもありますが、早期発見であればどちらも再発する可能性は低いとされています。
医療保険なら4日~7日程度の入院に備えられる。
ここまで、北山先生にピロリ菌や胃がんリスクについて解説いただきました。
北山先生いわく、手術をすると4日~7日程度の入院が伴うとのこと。公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、入院1日あたりの自己負担費用の平均は2万700円(※1、※2、※3)。入院にかかるお金の心配でさらにストレスを受けないよう、もしものときに備えて、医療保険への加入を検討しておくのもよいでしょう。
※1 集計ベースは、過去5年間に入院し、自己負担費用を支払った人(高額療養費制度を利用した人+利用しなかった人(適用外含む))。
※2 治療費・食事代・差額ベッド代・本人や家族等の交通費や衣類・日用品などを含む金額。また、高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。
※3 公的医療保険には、医療費の自己負担に限度額を定める高額療養費制度があり、実際の負担額はケースにより異なります。高額療養費制度は医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(1日から末日まで)で上限額を超えた場合、超えた額を支給される制度です。上限額は、年齢や所得に応じて定められます。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」
【まとめ】健康への備えは、若いうちから。
「国内のピロリ菌感染は減少しつつありますが、それでも胃がんの大きな原因であるピロリ菌は侮れない存在です。もしご家族にピロリ菌の感染があったり、胃の不調が長く続いたりする場合は、ピロリ菌の検査と胃内視鏡検査を受けることをおすすめします。
特有の自覚症状がない場合も多い胃がんは、早期発見・早期治療が重要です」と語る北山先生。20代~30代の元気な方でも、早めに調べてみてはいかがでしょうか。
あわせて、医療保険をはじめとした金銭的な備えもしておくことで、もしものときの安心を手に入れましょう。
写真/PIXTA
北山 大祐
医療法人社団惺心会きたやま胃腸肛門クリニック院長。医学博士。大学病院などを経て、国内有数の大腸肛門専門病院に勤務したのち、同クリニック開院。これまで3万5,000件以上の内視鏡検査を実施。日本大腸肛門病学会指導医・専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本外科学会外科専門医。
※ この記事は、ミラシル編集部取材をもとに、制作したものです。
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