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腰がすわるのはいつ?離乳食を早くはじめたいママ・パパが気になる赤ちゃんの姿勢。
離乳食をスタートさせたい親にとって気になるキーワードとして「腰がすわってない」という声が多く聞かれます。しかし、赤ちゃんの発達過程において本来「腰すわり」という定義はなく、「おすわり」またはおすわり手前の状態を指す言葉として多くの親には認識されているようです。
そこで、子どもの心身の発達を研究されている榊原洋一先生に、「腰すわり」の状態と、かかわり方やおすすめの遊びについて解説してもらいます。
目次
- 腰がすわるのはいつ?どんな状態?
- 腰すわりが進むように練習はするべき?
- 腰がすわるまで、離乳食はダメなの?ママ・パパの疑問に小児発達の専門医が回答。
- 【まとめ】腰すわりの時期には個人差がある。最初は大人が支えておすわりを体験させて。
腰がすわるのはいつ?どんな状態?
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赤ちゃんの運動発達は、体の上のほうから下へと進み、頭→首→上体→腰→足という順番に自分の意思で動かせるようになっていきます。運動発達の大切な節目となる、首すわり、寝返り、おすわり、立っち、あんよは、例外なくこの順番でできるようになります。
「おすわり」と「腰すわり」の関連。
運動発達が脊柱(背骨)から腰に達して腰がすわってくると、最初は大人がすわらせてあげると不安定ながらもおすわりの姿勢をとれるようになります。やがて自分でおすわりをして、安定して姿勢をキープすることができるようになります。いわゆる「腰すわり」は「おすわり」へのステップです。
腰がすわってきたかは背中のラインで確認しよう。
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腰すわりが進むにつれて、赤ちゃんを横から見たときの背中のラインが変わってきます。
・腰すわり初期(図左)
おすわりさせると背中は丸まって前のめりに。両手を床について体を支えます。バランスを崩して前後左右に倒れやすいので、サポートが必須です。
・腰すわり(図中)
おすわりさせたときに背中がほぼまっすぐに伸びています。頭が体の中心軸の真上にあれば、少しの間、支えなしで、手をつかなくてもおすわりの姿勢をキープできます。また、大人がすわらせてあげなくても、うつぶせの姿勢から上体を持ち上げて、自分でおすわりの姿勢をとることができるようになる子もいます。
・おすわりの完成(図右)
しっかり腰がすわると、おすわりしたときの背中がゆるいS字に反ってきます。おすわりの姿勢が安定し、両手を自由に使えるようになります。
腰すわりが進むように練習はするべき?
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おすわりは、運動発達のとても重要な通過点です。赤ちゃんの脳には、その子にとっての適切なタイミングでおすわりができるようになるプログラムがしっかり組み込まれています。練習をしてもしなくても、順調に発達している赤ちゃんは、みんな自然に腰すわりが進んでおすわりできるようになるのです。
腰すわりには個人差があることを忘れずに!
腰すわりの目安の月齢は5か月~8か月ごろ。首すわりや寝返りなどの運動発達と同様に、個人差があります。
ですから、まわりの同じ月齢の赤ちゃんと比べて、遅いからとあせる必要はありません。
おすわりすると赤ちゃんにいいことがいっぱい。
特別な練習をしなくても、赤ちゃんのペースで腰すわりは進んでいきますが、おすわりの姿勢には赤ちゃんにとっていいことがたくさんあります。あお向けねんねやうつぶせの姿勢に比べて視点が高くなり、周囲を立体的により遠くまで見渡せるようになります。
また、両手が自由になることで、おもちゃを触る、つかむ、口に入れる、落とす、投げるなど、手指を使ったいろいろな動作を試すことができるようになります。
おすわりの姿勢が安定していると、まわりの様子をよく観察でき、手指を使うことによって、好奇心や「○○してみたい」というモチベーションも育まれ、認知の発達が促されます。赤ちゃんは、おすわりすることでこのすばらしい状況を得られるのです。
腰すわりの時期には「親子のふれあい遊び」を楽しんで。
赤ちゃんがおすわりしている姿はかわいらしく、親にとっては目に見える変化と成長ぶりを感じられ、とてもうれしいものです。
腰がすわりつつある時期には、親子のふれあい遊びをとおして、おすわり姿勢で広がる新たな視界、両手が使える楽しさを体験させてあげるといいですね。バランスを崩して倒れたりしやすいので、サポートしながら親子で楽しむうちに自然に腰すわりも進んでいくでしょう。
おすすめのふれあい遊び。
1人ですわらせるとまだ不安定な時期は、大人の抱っこや、ベビー用のいす、バギーなどを利用して安定したおすわりの姿勢をつくってあげましょう。
・大人が抱っこ1
大人の膝の上に前向きですわらせて、後ろから背中を支えてあげます。一緒に絵本を見たり、おもちゃを触らせたり、赤ちゃんが見ているものを一緒に見て、「お花、きれいだね」などお話をしてみるといいですね。
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・大人が抱っこ2
大人は膝を立てて床にすわり、赤ちゃんを向かいあわせに抱っこ。大人の太ももで赤ちゃんの体を支え、左右に倒れないようにサポートしながら話しかけたり、絵本を見せたり、おもちゃを触らせたりしてみましょう。
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・大人が抱っこ3
両手を前について少しの間すわれるようになってきたら、大人の両脚で赤ちゃんを囲むようにして床にすわらせてみましょう。おもちゃを見せてリーチング(手を伸ばしてつかもうとすること)を誘ってみてもいいですね。
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・大人が抱っこ4
大人の太ももや膝の上にすわらせて脇をしっかり支え、歌を歌いながら、やさしく上下に揺れたり少し左右に体を傾けたりして、バランス感覚を楽しみます。
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・テーブルつきのチェアを利用して
テーブルつきのチェアに、赤ちゃんの背中が伸びるようにしてすわらせます。赤ちゃんはテーブルに手をついて姿勢を安定させることができます。やさしく話しかけながら絵本やおもちゃなどを見せて遊びに誘ってみましょう。
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・ベビーカーでお出かけするとき
ベビーカーでお出かけするときも、腰すわりにあわせてだんだんにリクライニングを起こしてあげましょう。景色を楽しんだり、興味をひきそうなものに手を伸ばしたりできるような環境をつくってあげましょう。
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腰がすわるまで、離乳食はダメなの?ママ・パパの疑問に小児発達の専門医が回答。
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腰すわりの時期は、離乳食をスタートする時期とも重なります。離乳食と腰すわりについてのママやパパたちからの疑問や悩みに、榊原先生がお答えします。
Q:しっかり腰がすわっていなくても、離乳食をはじめてよい?
A:離乳食をスタートする目安は5か月ごろ。このころになると、スプーンなどが口に入ると舌で押し出す原始反射(※)が消えて、離乳食をはじめることができます。離乳食の最初のころは、腰がまだすわっていなくても親が抱っこして食べさせてあげればよいでしょう。
※ 「押し出し反射」は、生まれつき備わっている原始反射の1つで、赤ちゃんが吸ってはいけないものを無意識に口の外に押し出す行動
Q:腰すわり前の赤ちゃんに、抱っこで離乳食をあげるのが難しいときはどうしたらよい?
A:背もたれの角度を調節でき、前にテーブルがついている食事いすなどを利用するとよいでしょう。赤ちゃんの体にあったいすを選び、安全に食べやすい姿勢を保つことが大事です。
Q:保育園に預ける予定なので、離乳食を早く進めたいのですが、食事いすにすわらせるとすぐに泣いて抱っこを求め、なかなか進みません。
A:無理せずに親が抱っこで食べさせて、食べることに慣れてきたらいすにすわることにも少しずつ慣らしていきましょう。離乳食の初期は、食べる量よりも食べることに慣れていくことが大事です。
参考:厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」
【まとめ】腰すわりの時期には個人差がある。最初は大人が支えておすわりを体験させて。
赤ちゃんの腰がすわり、支えなしでおすわりの姿勢をとれる目安の時期は5か月~8か月と幅があり、しっかり安定するまでは倒れないようにサポートしてあげましょう。また、腰すわり前でも離乳食をはじめてOKです。
9か月になっても支えなしのおすわりができない赤ちゃんのなかには、発達がゆっくりめの健常児もいますし、病気など何らかの原因があって運動発達が遅れている場合もあります。心配なときはかかりつけの小児科医に相談してみましょう。
首すわり、寝返りなどこれまでの運動発達の経過、腰すわり以外の赤ちゃんの様子も含めて、総合的に診てもらうことが大切です。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/こつじゆい
【監修者】榊原 洋一
医学博士。小児科医。お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。専門は小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学で発達障害研究の第一人者。著書は『ヒトの発達とは何か』(筑摩書房)など多数。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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