保育園に途中入園しやすい時期は?もし入園できなかったら?【専門家が解説】
保育園への入園といえば、年度初めの4月1日入園を目指す方が多いもの。ですが、「年度途中で子どもを入園させなくてはならない」という方も中にはいるでしょう。年度途中でも入園を申し込むことは可能で、空きがあれば入園できるしくみになっています。
この記事では、主に認可保育園の途中入園について、働く親の保活の悩みに寄り添ってきた「保育園を考える親の会」アドバイザー顧問の普光院亜紀さんが解説します。途中入園の基本的な流れや手続きのほか、認可保育園に入れなかったときの対処法や、途中入園するときに気をつけておきたいことなども紹介します。
目次
- 途中入園しやすい時期ってある?
- 認可保育園への途中入園の基本的な流れ。
- 認可保育園に途中入園できなかったら?
- 途中入園するとき、気をつけたいこと。
- 途中入園にはメリットもある。
- 【まとめ】保育園の空き状況は地域差が大きい。早めの情報収集が大事!
途中入園しやすい時期ってある?
認可保育園の利用申込は、市区町村が窓口となります。多くの市区町村では年間を通じて申し込みを受け付けています。全体として、進級でクラス定員が増える4月が最も入園しやすいという状況は変わりませんが、年度途中での入園がしやすくなっているクラス・園もあるので調べてみましょう。
0歳児クラス(特に年度前半)。
近年、「1歳を過ぎるまでは家庭で育てたい」と、1歳児クラスの4月1日入園を希望する方が多くなっています。そのぶん、0歳児クラスに空きのある保育園が増えています。
東京都内でも、4月入園で0歳児クラスの定員が埋まらず、年度途中に少しずつ埋まって、年度前半で満員になるという園を多く見かけます。もちろん、0歳児クラスでも4月入園で満員になる園、年度後半まで空きがある園もあり、さまざまです。
年度前半、認可保育園の空きが多くなっている地域では、小規模保育、家庭的保育、認可外保育施設も空いています。4月以降、認可から順番に埋まっていく場合が多いでしょう。
3歳児クラス(特に4月)。
3歳児クラスになると、幼稚園や認定こども園(幼稚園型)など通園先の選択肢が増えるため、保育園から幼稚園などに転園する子どももいます。また、2歳児クラスとは保育士の配置基準が変わるため、定員枠が増える場合も多いです。そのため、3歳児クラスでは4月の定員枠に空きが出やすく、年度途中の入園も比較的しやすい傾向があります。
参考:e-Govポータル「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)」
参考:こども家庭庁「こども未来戦略方針の具体化に向けた検討について 参考資料1」(2023)(参照:2024年8月8日)
通園する自治体の保育園事情を把握しておこう。
「認可保育園に途中入園しやすい時期」の目安は先ほどご紹介したとおりですが、実際のところどうなのかは、やはり地域や園によって異なります。大切なのは、お住まいの自治体の保育園事情を把握しておくこと。多くの自治体では、園やクラスごとの空き状況や待機児童数などを毎月公表しているので、チェックしてみましょう。
入園させたい保育園のクラスに、4月の入園者が決定した時点でまだ空きがあるのか調べたあと、「去年は何月ごろまで空きが残っていましたか?」と役所の保育担当の窓口で聞くのもおすすめです。
認可保育園への途中入園の基本的な流れ。
途中入園のための保活はおおまかに、「情報収集」→「保育園の見学」→「必要書類の準備と申し込み」→「内定・入園」というステップで行います。
ステップ1:情報収集や自治体窓口への相談。
まずは、その自治体の中にどんな保育園があるのかなど、情報を収集しましょう。自治体が発行する保育園の入園案内には、認可保育園など「認可を受けている保育施設」の一覧と、途中入園の手続き方法が掲載されています。
保育施設の一覧で、受け入れ月齢や住所(通園距離)などを見て、条件に合いそうな園があればリストアップしましょう(ここでリストアップした園を、次のステップで見学することになります)。
なお、入園案内を読んでもわからないことがあれば、役所の担当窓口に相談して、疑問点を解消しておきましょう。
ステップ2:保育園の見学。
パンフレットやホームページでのイメージと、実際の保育の様子が大きく異なる場合もありますので、入園希望先を決めるにあたって、見学は必須です。リストアップした園について、毎日通園することに無理はないか、わが子を安心して預けられるか、自分の目でたしかめることはとても大事です。施設によっては見学の時期を限定している場合もありますから、早めに確認しておきましょう。
ステップ3:必要書類の準備、申し込み。
途中入園の場合、多くの自治体では入園希望月ごとに申込期間を設けています。「入園月の前々月から申し込みを受け付け、前月の上旬が締め切り」というケースが多い印象ですが、必ず自治体に確認しましょう。
提出書類の中には、就労証明書など就労先に記入してもらうものもあります。必要な書類を確認し、期日に間に合うように余裕をもって書類の準備を行いましょう。
認可保育園に途中入園できなかったら?
年度途中の入園は、4月入園と同様に申込先着順ではありません。入園申込者の中から、保育必要度の高い世帯を自治体が選考して入園を決定します。
認可保育園の競争率が高い場合や、希望した認可保育園のいずれにも入れなかった場合は、どうしたらよいでしょうか。
家庭的保育事業や小規模保育事業を利用。
認可を受けている保育施設(事業)は認可保育園だけではなく、「家庭的保育事業」や「小規模保育事業」などもあります。これらの施設は小規模で定員は少なめなのですが、0歳児~2歳児クラスまでしかないことが多いため、認可保育園に比べると競争率は高くない傾向にあります。
認可保育園の空きが少ない地域では、こうした施設の利用も検討しておくとよいでしょう。
参考:こども家庭庁「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成27年7月改訂版)」(参照:2024年7月2日)
認可外保育園に入園。
認可保育所等のいずれにも入れなかった場合は、認可外保育園に入園するという手もあります。認可保育園に比べると空きがある施設は多いですから、保活の段階でも入園先として視野に入れておくとよいでしょう。
しっかり選べばメリットもあるので、ぜひ園の見学を。
認可外保育園は、小規模なものが多く、子どもも職員も少人数で、保育者と保護者の信頼関係ができやすいというメリットがあります。
特に低年齢の子どもは、広々とした施設にたくさん子どもがいてにぎやかな環境より、広すぎない家庭的な環境のほうが落ち着くこともあります。「認可外に通わせることになったけど、こぢんまりとした環境が子どもにあっていたみたいで、とてもよかった」という保護者の方の感想を、私も何度か聞いたことがあります。
ただし、認可保育園に比べると、認可外保育園は保育の質のバラつきが大きいことは否めません。認可保育園も認可外保育園も保育者の配置人数の基準が決められていますが、前者は基準人数の全員が保育士資格(国家資格)を持っている必要があるのに対して、後者は、「保育従事者の3分の1以上は有資格者を配置すること」という規定になっています。また、現実には満たしていない園もあり、保育事故につながるケースもあります。
「担任の先生が常勤か」「担任の先生が有資格者か」「先生が忙しすぎないか」「先生同士でチームワークが取れているか」などを、ぜひチェックしてください。見学をして、疑問に思うことは施設に確認するなどして、安心して預けられる施設かどうかをしっかり見極めることが大事です。
幼稚園や認定こども園に入園。
4月1日時点で満3歳以上の子どもでしたら、幼稚園や認定こども園(幼稚園型)に入園し、預かり保育を利用する手もあります。就労などで保育が必要な状態と認められれば、預かり保育の利用料にも補助があります。
参考:こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」(参照:2024年7月2日)
途中入園するとき、気をつけたいこと。
途中入園するときには、次のようなことに気をつけておきましょう。
入園決定後、いつまでに就労開始する?
入園が決まったら、いつまでに就労を開始すればよいか、自治体のルールを確認しておきましょう。「入園月の1日から保育園を利用することができ、慣らし保育の期間を経て月末までに就労を開始」など、自治体ごとに開始期限が決められています。
待機児童が多い地域や、空きが出にくい1歳児~2歳児クラスへの途中入園を目指す場合は、本来の入園希望月よりも早めに申し込みをしておき、入れるときに入ってしまうという手もあります。ただし、決められた期限を過ぎても就労していない状態が続くと、入園取消となる場合も。育児休業中の方は、復帰時期について職場とよく相談しておくことが大切です。
また、「求職中」で入園申請をして入園が決まった場合は、入園後3ヶ月以内に仕事を決めて働き始めなければならない自治体が多いはずですので、注意しましょう。
子どもにとって途中入園はストレス?
新しい環境に慣れるまでは、子どもが多少泣いたりするのは当然のこと。むしろ、親自身が「預けて大丈夫?」と過剰に心配してしまうと、不安が子どもにも伝わってしまいます。だからこそ、安心してわが子を預けられる施設を見極めることがとても大切。親が先生を信頼している姿を子どもに見せて、「夕方にはお迎えに来るよ」と安心させてあげましょう。
また、「入園してすぐに行事があるけど、うちの子が参加しても練習についていけなくて、ストレスになっちゃうかな」など気になることがあれば、園に相談するのがいちばんです。その子にもできる役割を用意して、「参加して楽しかった!」と思えるような配慮をしてくれるはず。そうやって子どもが自信を持てるように、いろいろ工夫するのが「よい園」なのです。
途中入園にはメリットもある。
「0歳児クラスや1歳児クラスで、全員が4月からの新入園児」という場合、4月当初はどの子も新しい環境に慣れずに泣いている光景がよく見られます。
その子たちが慣れて落ち着けば、先生にも余裕が出てきます。そのような時期に途中入園した子に対しては、先生もしっかりと向き合いやすく、手厚いサポートが期待できるかもしれません。
【まとめ】保育園の空き状況は地域差が大きい。早めの情報収集が大事!
全国的には認可保育園はかなり入りやすくなってきており、途中入園を希望する方にとってもよい状況だといえるでしょう。
とはいえ、認可保育園入園の競争率は地域差が大きいのが現状です。また、利用申込の手続きなども自治体ごとに異なります。4月入園のための保活もそうですが、途中入園を目指す場合も、地域の保育園事情をできるだけ早い時期からしっかり調べておくことが大切です。
写真/PIXTA イラスト/腹肉ツヤ子
【監修者】普光院 亜紀
保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク「保育園を考える親の会」代表を経て、現在はアドバイザー(顧問)として活動。保育ジャーナリストとして執筆・講演も行っている。著書に『後悔しない保育園・こども園の選び方』(ひとなる書房)、『不適切保育はなぜ起こるのか』(岩波新書)など。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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