定年って延長されるの?何歳まで働くの?40代〜50代から考えておきたい老後の働き方。
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2021年4月に改正された「高年齢者雇用安定法」によって、会社員の定年後の働き方が変わる可能性が出てきたのと同時に、企業には「70歳までの就業機会の確保」が努力義務として課されるようになりました。
定年年齢が60歳だった時代と比べると、平均寿命や健康寿命が延びたこともあり、いつまでどう働くかを個人が選択する必要のある時代が到来しています。
何歳まで働くといいのか、長く働くための制度にはどんなものがあるのか、長く働くために今からしておいたほうがいいことは何か。今のうちに知っておくべきポイントを、長生き時代の働き方とライフプラン考案を得意とする、ファイナンシャルプランナーの佐藤麻衣子さんに解説していただきました。
目次
長く働ける制度が整いつつある。
少子高齢化が進むなか、高年齢者が働き続けることができる環境を整備するためにつくられた「高年齢者雇用安定法」ですが、2012年の改正では、企業に例外なく「65歳までの雇用確保」が義務付けられました。
そして、2021年の改正では、「70歳までの就業機会の確保」が努力義務として新設されました。いわゆる「定年延長」です。 これに伴い、以前よりも長く働くことができる環境が整備されています。
参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法改正の概要」(2021年)
ほとんどの企業では65歳まで働ける。
新設された「70歳までの就業機会の確保」はあくまで努力義務であり、企業に一律で義務付けられた「65歳までの雇用確保」とは大きく異なります。
従業員21人以上の約23万社の高年齢者の雇用状況を集計したところ、65歳までの雇用確保措置がある企業は99.9%で、65歳定年企業は23.5%となっています。一方、66歳以上も働ける制度がある企業は43.3%、70歳以上も働ける制度がある企業は41.6%です。
まずは会社の規則を知ることから。
2023年の厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」によると、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は29.7%となっています。そのため、まず自分の会社の制度はどうなっているのかを知ることが大切です。
確認するポイントは、就業規則に記載されている定年の年齢や再雇用規定、嘱託規定の内容など。転職を考えている場合は、転職先の高年齢者就業確保措置の内容を確認しましょう。実際に継続して何歳まで働けるのかという点は、家計を考えるうえでもとても大切なポイントです。
何歳まで働くのがベター?
人によって、業種や健康状態、経済状況などの環境が異なるため、いつまで働くのがいいのかを判断するのは非常に難しいことです。とはいえ、定年まであと数年という段階になって慌てて考えたのでは、あとの祭りということになりかねません。
40代〜50代は、今後どのように生きたいのか、どのような選択肢があるのかについて、考えはじめなければいけない世代といえるでしょう。
健康寿命・平均寿命は延びている。
2019年の男性の健康寿命は72.68歳、平均寿命が81.41歳で、その差は8.73年。一方、女性の健康寿命は75.38歳、平均寿命が87.45歳で、その差は12.07年となっています。現状では、年を追うごとに伸びる傾向にあり、今後もさらに伸びる可能性があります。あくまで参考とすべき数字ですが、寿命を考えると70歳でも働くことは可能だといえます。
家計のことを考えると、健康であれば働くほうがベターでしょう。また、70歳以上の高齢者の就業率が高い都道府県ほど、老人医療費(70歳以上の者、および65歳以上70歳未満で市町村長により障害を認定された者に対してかかる医療費)が低くなる傾向にあるというデータもあります。働くことが、将来の健康にもつながるといえるのではないでしょうか。
考えておきたいライフイベント。
定年が延長する一方で、収入は増え続けるわけではありません。役職定年や年金受給を迎えると収入は減少し、介護費用などの新たな支出の発生も考えておく必要があります。
役職定年
役職定年とは、管理職などの役職に就いている従業員がある年齢に達すると、その役職を離れる人事制度のこと。大企業には存在することもありますが、この制度がない会社もたくさんあります。まずは、自分の会社の制度を確認しましょう。役職定年がある場合は、給料が下がることで仕事へのモチベーションが下がってしまうことも。
近年は年功序列・終身雇用制度から、ジョブ型雇用(当該の職務に適したスキル・経験を持った人を採用する雇用方法)に移行する企業も現れはじめています。今後の会社の動向を気にしておくことで、制度などが変わったときにも落ち着いて対応できるようになるはずです。
定年退職
人手不足の業界であれば定年後も働ける可能性はありますが、定年後の再雇用制度のない会社も一定数あるため、人によって状況は異なります。
転職を考えている場合は、年収だけを考慮するのではなく、より長く働けたり、副業ができたりするかどうかということも判断基準にするといいでしょう。また、退職金など家計に影響することは、事前に把握しておくようにしてください。
年金受給
年金の受給開始年齢を決めることは、一昔前になかった新たなライフイベントです。しかし、何歳まで生きるかわからないので、何歳から受給するのがもっともいいのかは誰にもわかりません。
ただ、老齢基礎年金と老齢厚生年金は65歳で受け取らずに繰り下げて受給すると、繰り下げた期間に応じて年金額が増額され、その増額率が一生続きます。そのため、長生きする可能性があることを考えると、繰り下げ受給を検討してみてもいいかもしれません。
厚生労働省が試験運用中の「公的年金シミュレーター」では、将来受給可能な年金額を簡単に試算することができます。また、日本年金機構の「ねんきんネット」でも、将来の年金受給見込み額などを確認できます。
何歳までにいくら貯蓄して、何歳から年金を受給するか計画しておけば、「思ったより長生きしたらどうしよう」という不安を解消できるはずです。
介護
高齢者にとって、新しく大きな支出となってくるのが自身や配偶者などの介護費用です。介護に要した費用と期間についての調査によると、一時的な費用の合計が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円、期間の平均が61.1か月というデータが出ています。
参考:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2021年)
とはいえ、この費用感も人によって異なり、施設に入るか在宅か、介護する家族がいるかいないか、といった条件によって大きく変わります。まずは介護保険制度について、しっかりと把握しておきましょう。また、高額介護サービス費の負担限度額があることなども知っておき、実際に介護が必要になったときの費用感をイメージしておくことも大切です。
長く働くために今からできること。
何よりもまず、健康であり続けることが重要です。健康であるか否かは、老後の資金確保の難易度に影響をおよぼします。できるだけ長く健康を維持できるようにセルフケアを心がけ、そのうえで長く働くことができるように自己研鑽を図りましょう。以下、詳しく解説します。
健康の価値を認識する。
健康な体は働くための資本。食生活の見直しや運動をするなど、健康を維持するための努力を惜しまないようにしましょう。医療費や介護費がかからなければ、家計への負担も大きく減らすことができます。現在の収入が不安だとしても、健康でいることができれば、理想のライフプランを成立させることも難しくありません。
長く雇用されるためのスキルを身に付ける。
専門性が高いスキルを身に付けておくと、長く雇用される可能性も高くなります。まずは自分のキャリアの棚卸しを行い、それをもとに今から身に付けやすいスキルを習得しましょう。
また、雇用保険の被保険者が利用できる教育訓練給付制度で資格などを取得しておくと、高齢者になっても雇用されたり、個人事業者として働き続けたりすることができます。
ちなみに、ITスキルについては、働くことに限らず、新しいサービスを利用するなど現代で生活するうえでも必要不可欠なスキルといえます。
近年、家計管理に役立つサービスや行政のサービスも、WEBサイトやアプリなどで利用できるようになっています。コストパフォーマンスがよいかわりにWEB経由での申し込みやアプリ利用を必須とするサービスもあるので、ITスキルの重要性は、今後ますます高まっていくといえるでしょう。
老後の資金を確保しておく。
一定のたくわえがあれば、心理的にもゆとりができて、結果的に長く仕事を続けることができます。そのためには、毎月お金を積み立てして資産形成できる個人年金保険などで、少しずつ老後資金の準備をしておくといいでしょう。
【まとめ】健康と知識が、長く働くための最大の武器になる。
年を取るほど健康の価値は上がっていきます。健康リスクが高くなる40代〜50代は、健康を維持するための労力を惜しまないようにしましょう。また、会社の雇用制度や行政の制度など、さまざまな知識を身に付けることが、長く働くための最大の武器になります。ぜひ、情報のアンテナをはっておくことをおすすめします。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/オオカミタホ
佐藤 麻衣子
社会保険労務士/CFP(R)認定者/1級ファイナンシャル・プランニング技能士。銀行員として運用相談業務に従事していたとき、リーマンショックを経験。ライフプランを軸にした資産管理の大切さを痛感し、CFP資格を取得する。2015年にウェルス労務管理事務所を開業し、法人向けのライフプラン研修などを提供するほか、執筆・講演活動なども行っている。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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