頭のフケをなくす方法を解説!洗いすぎると逆効果?【医師監修】
肩や髪の毛についた白いフケ……。「不潔な人」と思われそうで、ヘアケア・頭皮ケアに気をつけている人も多いことでしょう。しかし、間違ったお手入れでフケのトラブルが増えてしまったり、皮膚の病気の前兆だったりすることもあります。
日々のケアにも正しい知識が大切。あつた皮ふ科クリニックの佐々木良輔先生に、知っているようで知らないフケとフケをなくす方法について教えていただきました。
目次
フケは誰にでも出るもの。
フケは頭皮の角質がはがれたものです。古くなった角質がはがれて落ちるのは新陳代謝(肌のターンオーバー)の結果で、誰にでも起こる生理的なものです。フケが出るのは頭皮の環境が不潔だからではありません。
フケには「乾性」と「脂性」がある。
フケの種類は大きく2つに分けられます。1つが「乾性」のフケ。頭皮の乾燥が原因となるフケです。乾性のフケはパラパラと細かく、乾いています。
もう1つが、頭皮の皮脂が原因となる「脂性」のフケ。脂性のフケは湿っていて、比較的大きなかたまりで髪に付着していることが多いです。
病気が原因のフケもある。
前述したとおり、フケが出ること自体はごく自然なこと。ですので、多少フケが出ても心配する必要はありません。
ただし、フケが大量に出て気になるといった場合は医療機関に相談して、対策することもできます。かゆみや湿疹、抜け毛といったほかの症状がある場合は、何か別の病気が潜んでいる可能性もあるので、注意が必要です。
フケに関連する病気と治療法。
皮膚の病気によって、フケが出たり、フケの量が増えたりすることがあります。「症状が出ているのは頭のどの部分か?」「フケ以外に湿疹や炎症、痛みはないか?」などが、皮膚の病気かどうかの判断基準となります。
フケの原因となるさまざまな病気を、治療法を交えて紹介します。
乾燥性湿疹
●原因・症状
皮脂が不足していて頭皮の乾燥が進行し、かゆみや炎症を起こして湿疹が出るのが乾燥性湿疹です。乾燥肌の人やアトピー性皮膚炎の方は乾燥性湿疹を起こしやすいので注意が必要です。
●対処法・治療法
治療はまず、ステロイド剤で湿疹を改善させます。乾燥予防にスプレータイプの保湿剤を処方することもあります。
脂漏性皮膚炎
皮膚に常在する真菌(カビ)の一種「マラセチア菌」が、過剰に分泌された皮脂をエサに増殖。その際にできる物質が炎症を引き起こすのが「脂漏性皮膚炎」です。
皮脂分泌の多い中高年男性、あるいは生後3か月ごろまでの赤ちゃんによくみられる病気です。髪の生え際など皮脂分泌が多い部位に症状が強く出る傾向があり、炎症は顔に出ることもあります。
●対処法・治療法
皮膚科で処方されるステロイド剤で炎症を抑え、かゆみが強い場合はかゆみ止めの飲み薬や抗ヒスタミン薬を処方。症状に対処しつつ、抗真菌薬でマラセチア菌の増殖を抑えます。
ドラッグストアなどで販売されている「抗真菌薬入りシャンプー」を使うのも有効です。
乾癬(かんせん)
●原因・症状
免疫系の異常により、皮膚に炎症が起こる病気。赤く盛り上がった発疹ができ、その表面のカサカサとした銀白色の皮膚がポロポロと落ちます。症状は頭やひじ・ひざ・腰まわりなど、全身のこすれやすい場所に出現。また、いくつかの発疹がつながって帯状に広がることもあります。
患者全体の50%程度がかゆみを伴い、まれにですが、関節の痛みを訴える人もいます。感染することはなく、また、症状が進行・悪化していく病気でもありません。
●対処法・治療法
ステロイド外用薬やビタミンD3外用薬といった塗り薬のほか、免疫の働きを抑える「紫外線療法」が基本的な治療法になります。
症状がひどい場合は内服薬を服用したり、免疫に関わる物質の働きを弱める生物学的製剤の注射療法を行ったりすることもあります。
白癬(はくせん)
●原因・症状
白癬菌という真菌による感染症で、頭皮に赤くて丸いカサカサができ、放っておくと髪の毛が抜けることがあります。
ただし、現在では一般にはほとんどみられません。私のクリニックでも白癬の患者さんは、柔道やレスリングなどのスポーツをしている人がほとんど。頭同士を接触させる、あるいは頭をマットにこすりつけることで感染・繁殖するためと思われます。
●対処法・治療法
抗真菌薬を服用します。
フケ対策は日々のケアから。
フケは当たり前に出るものではあります。ですが、日々のちょっとした気遣いでフケを増やさないようにはできるものです。フケのタイプが乾性か脂性かによって対処が異なる場合があるので注意が必要です。
フケ対策1:髪の洗い方。
洗髪は爪を立ててゴシゴシとこすらず、シャンプーをよく泡だて、指の腹で優しくなでるように洗いましょう。
洗いすぎや摩擦によって地肌の表皮がはがれると、乾燥やかゆみの原因になります。頭皮は厚くて比較的丈夫ではありますが、顔と同じ皮膚です。頭皮も顔と同じようにいたわってあげましょう。
フケ対策2:シャンプーを見直す。
洗浄力が強いシャンプーは必要な皮脂まで洗い流してしまいます。肌が乾燥しがちな人、フケのタイプが乾性の人は市販の敏感肌用シャンプーを使ってみるのもよいでしょう。
ただし、「敏感肌用」といってもそれなりの洗浄力はあります。敏感肌用シャンプーを使ってもフケが改善されない場合は、週に何度かはお湯だけで洗うなど、シャンプーを使う頻度を減らしてみるのも1つの方法です。
脂漏性皮膚炎の方は抗真菌薬入りのシャンプーがおすすめです。
フケ対策3:保湿剤を使う。
乾燥した手足にボディクリームを使うように、乾燥肌の人は頭皮にも保湿剤を使いましょう。医療機関で頭皮用保湿スプレーを処方してもらうこともできますが、顔に使っている化粧水(ローション)や保湿クリームを頭皮に使ってスキンケアをしてみてもよいでしょう。
顔用のものを頭皮に使っても効果があります。もしも、かゆくなったり、しみたりしたら使用を中止して、医療機関に相談してください。
フケ対策4:マッサージは避ける。
フケのタイプが乾性・脂性のどちらであっても、あるいはほかの病気であっても、皮膚の摩擦はNGです。こすれば角質がはがれ落ち、傷ついた皮膚はバリア機能が低下し、頭皮の状態が悪化します。
肌表面はカサカサ、外部からの刺激に弱く、かゆみを引き起こす……と、悪循環に陥って地肌トラブルの要因となります。フケがある場合、頭皮のマッサージはおすすめできません。
フケ対策5:規則正しい生活を。
特に乾癬は、ストレスや脂っこい食事など、生活習慣が乱れると発症しやすくなるといわれています。日々の生活を見直し、バランスのよい食事・適度な運動・十分な睡眠を心がけ、規則正しい生活を目指しましょう。
食事・運動・睡眠など、生活習慣を整える方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
フケが気になったら医療機関に相談。
フケは原因によって対処法が異なります。ケアを間違えると症状が悪化することがありますから、対処に迷ったら、医療機関を受診することをおすすめします。原因を見極め、しっかりと適切なケアをしましょう。
写真/PIXTA イラスト/こつじゆい
佐々木 良輔
2006年、浜松医科大学医学部医学科を卒業。徳州会病院グループ、藤田保健衛生大学病院、刈谷豊田総合病院などを経て、2015年にあつた皮ふ科クリニックを開業。オンライン診療にも注力し、患者は東海エリアのみならず全国へと広がる。テレビの情報番組や自身のブログにて健康情報を積極的に発信。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。