一人暮らしの生活費はいくらかかる?節約や貯蓄のコツをFPが伝授。
初めての一人暮らしには、不安がつきもの。そこで、ファイナンシャルプランナー(FP)として若年層のマネー教育にも携わっている氏家祥美さんが、一人暮らしのお金の管理術をアドバイス。一人暮らしの平均支出から生活費の節約方法、そして貯蓄のコツも聞きました。
目次
一人暮らしにはいくらかかる?
一人暮らしとなれば、家賃や水道光熱費など、これまで意識したことのないお金を自分で管理することになります。1か月生活するために必要なお金の相場を、データから読み解いていきましょう。
一人暮らしの1か月の平均支出は約22万円。
総務省統計局「家計調査」(2022年)によると、34歳以下の単身勤労者世帯のいわゆる生活費にあたる消費支出の平均は16万919円で、社会保険料などの非消費支出の平均が5万7,491円となっています。この2つの合計、つまり21万8,410円が1か月の平均支出になります。
実収入平均を男女別に見ると、男性が38万222円なのに対して女性が30万338円(いずれも34歳以下の単身勤労者世帯)と、女性は男性よりも7万9,884円低くなっています。
一方で、消費支出平均は男性が15万9,286円に対し、女性が16万3,130円と若干多く、特に、住居費は女性が4万1,613円に対して、男性が3万2,853円と、女性は男性よりも8,760円高くなっています。これは、物件のセキュリティーなど条件にこだわる傾向が強いからと考えられます。食費平均は男性が3万7,823円に対し、女性は3万921円と、男性のほうが高い傾向にあります。
地域によって異なる生活のコスト。
地域や気候によっても、一人暮らしにかかる金額と内訳は大きく変わります。単身勤労者世帯の1か月の支出を見てみましょう。
北海道・東北地方では「光熱(電気、ガス)・水道」費が1万3,854円ともっとも高く、中でも灯油代を含む「ほかの光熱」への支出が1,834円でほかの地方と比べると多くなっています。
一方で北陸・東海地方では電化製品やたんすといった家具などを含んだ、「家具・家事用品」への支出が6,747円と多くなっています。内訳を見ると、エアコンなどの「冷暖房用器具」への支出が2,015円とほかの地方よりも多い傾向にあります。
東京都で一人暮らしをする場合は?
単身勤労者世帯で見てみると、関東地方では1か月あたりの実収入が38万6,683円と、全国平均の36万9,295円と比較しても高くなっています。また、実支出も全国平均が24万5,371円であるのに対し、関東地方は26万7,596円と高い傾向があります。モノや情報があふれ、サービスを提供する場所も充実しているからなのでしょう。
このほかに関東地方では住居費も高くなっていますが、中でも東京都は群を抜いた金額となっています。
総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」を見ると、全国平均の1か月あたりの家賃は5万5,695円で、1畳あたり3,074円に対し、東京都の1か月あたりの家賃平均は8万1,001円で、1畳あたり5,128円と非常に高くなっています。
1か月あたり8万1,001円は、東京都に次いで高い神奈川県の6万8,100円より1万2,901円高く、もっとも金額の低い、鹿児島県の3万7,863円の倍以上です。
東京都での一人暮らしは、どこまで家賃負担を許容できるかが大きなポイントとなりそうです。
参考:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」
2人以上での生活費や、ライフイベントごとのお金について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
一人暮らしの生活費を節約するには?
20代~30代にとって、1か月の生活費約22万円は大きな負担。収支のバランスを上手にとりつつ、将来のためにお金を貯めていくにはどうしたらいいのか、節約ポイントを解説します。
一時的な出費の抑え方。
家を探す段階で契約時の支払いをおさえて節約ができれば、そのぶん余裕をもって新生活をスタートできます。
敷金・礼金のうち礼金は返却されないお金なので、極力礼金なしの物件を探しましょう。最近では入居後の一定期間、決められた条件を守ると家賃が無料になる「フリーレント物件」などに注目してみるのもいいかもしれません。なお、フリーレント物件を途中で解約すると違約金が発生する可能性があるため、注意が必要です。
また、転勤の予定を控えているなど住む期間が短い場合は、家具・家電付き物件がおすすめです。家賃はやや高くなる傾向がありますが、家財道具をそろえるコストや次の引っ越し費用を抑えられます。そのほか、家具・家電はリサイクル品やサブスクリプションなど、さまざまなサービスを比較検討して決めていきましょう。
家賃や通信費など固定費の抑え方。
賃貸物件(アパート、マンションなど)選びで重要なポイントとなるのが、予算と自分にとって譲れない物件条件を決めること。
物件を検討している段階では、予算を5,000円ほど超えたとしても問題はないと考えがちですが、家賃は毎月かかりますから後々家計のやりくりに響いてきます。
たとえば、「家の広さと日当たりは絶対」とするのであれば駅までの距離や築年数といったほかの条件はあきらめるなど、優先順位が低いポイントは妥協し、決めた予算を安易に変えないことが大切です。また、家賃が安くても管理費が高い物件もあるため、家賃と管理費の合計支払額を念頭に置いたうえで家探しをしましょう。
家賃の次に大きな固定費は通信費。スマートフォンの通信費は、格安スマホや格安SIMを使うなどして基本料金をなるべく抑え、家族割引などのプランがあれば積極的に利用しましょう。一人暮らしをする場合でも家族関係を証明する添付書類を提出すれば、家族割引が適用されるケースがあるため、確認することをおすすめします。
またネット通信費は、インターネット回線を引くかどうか、自分の生活スタイルにあわせて検討するのも1つの手です。
家であまりスマートフォンやパソコンを使わない人は、回線を引かない選択肢も考えてみるといいでしょう。または、スマートフォンなどのデータ通信機能を利用してパソコンなどでインターネット回線を使用できるようにする、テザリングを活用するのもおすすめです。ただし、契約プランによってはデータ通信料金が別途かかる場合があるため、事前に確認しましょう。
食費や娯楽費など変動費の抑え方。
変動費の節約で取り組みやすいのは食費です。食事は毎日のことですから、外食の頻度を減らして自炊の割合を増やし、習慣化することが出費を抑えるポイントになります。
自炊は面倒と感じてしまう人は少なくありません。この大きなハードルを乗り越えるには、「コンビニまで買いに行くよりも、家の冷蔵庫を開けたほうがラク」と感じられるように、半調理や調理済みの状態でいくつか作り置きを用意しておくことが重要です。
ごはんは多めに炊いて1食ぶんずつ冷凍保存する、スーパーで使い切りサイズのカット野菜を買うなど、ゼロから調理しなくても済むように保存しておけば、お金と時間の節約になります。忙しくて時間がないという人も、週に1日でも「お金を使わない日」をつくり、自炊すると決めるのもおすすめです。
また趣味などにかかる娯楽費は、自分の使える金額がどのくらいかを把握し、なるべく抑えるように工夫しましょう。ウォーキングをする、図書館で本を読むなど、お金をかけずに余暇を楽しむ方法を考えるのもよさそうです。
一人暮らしをしながら貯蓄するコツ。
一人暮らしをしながらでも、将来への備えは必要です。生活費を捻出しながら、貯蓄していくポイントをおさえましょう。
まずは「先取り貯蓄」を取り入れる。
月収の一定額を前もって貯蓄に回す、「先取り貯蓄」を早めに取り入れるのがおすすめ。先取り貯蓄は、銀行の自動積み立てや会社の財形貯蓄などを利用して、毎月一定額ずつ自動的に積立貯蓄をすることです。貯蓄額は「月収の1割、賞与の半分」が目安になります。自宅暮らしの人はもっと貯金できるでしょう。
社会人になりたてで貯蓄がまったくないという人は、困ったときに引き出せるお金も必要です。普通預金口座の残高を、安定して10万円以上維持できるようになってから先取り貯蓄をはじめるといいでしょう。10万円あれば、病気やケガ、不測の事態が起きたときにも対応しやすくなります。
2年目以降など月収が上がって手取りや月々の積立額が少しずつ増え、貯蓄の残高も50万円ほどになったら、自動積立や財形貯蓄とあわせて、NISAなどで積立投資をはじめてもいいでしょう。さらに昇給したタイミングで昇給額の半分ぐらいを積立額に上乗せしていくと、年齢に応じて無理なく貯蓄ができ、ライフステージの変化や老後の備えにもなります。
「予算」の中でやりくりするクセを。
毎月の先取り貯蓄分や、家賃や水道光熱費などの口座振替分から逆算すると、1か月で使えるお金が把握できます。食費や被服費などの変動費は、あくまでその額の中で使って「予算の範囲内でしか買い物をしない」ように意識してください。
そのとき注意したいのが、クレジットカードやスマホ決済などのキャッシュレス決済です。キャッシュレス決済は便利ですが「お金を使っている」という感覚が弱く、つい使いすぎてしまいがち。一人暮らしをしたばかりで、やりくりになれないうちは使わないほうが無難です。
もしキャッシュレス決済を使う場合は、オートチャージや後払い設定は避けて、毎月一定の金額をチャージするようにしましょう。チャージ金額は、月収から家賃などの固定費や生活費を引いて自分が使える金額を逆算して決めます。家計簿や収支管理アプリなどを上手に使い、自分が何にいくらを使ったのかを常に確認して、お金に対する感度を高く持ち続けましょう。
一人暮らしを「貯める生活スタイル」で。
一人暮らしをはじめたばかりのころは、まだまだ暮らしの基盤は不安定。ライフスタイルや収支を整えつつ、貯蓄に意識を回すのは難しいかもしれません。
しかし、言い換えればお金を貯める生活スタイルをイチから自分でつくっていくチャンスともいえます。一人暮らしのスタートから身近なお金についてしっかりと考えることで、先取り貯蓄のシステムをつくりましょう。日々のお金のやりくりを意識することが、資産づくりの最初の一歩につながります。
写真/PIXTA
氏家 祥美
FP事務所ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー、セカンドキャリアアドバイザー。旅行会社、FP会社で働いた後、2010年に現在の事務所を開業。金融リテラシーの普及に努め、高校の家庭科の教科書では経済パートの執筆も行う。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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