2人暮らし~4人暮らしの生活費はどう変わる?家計管理とあわせて解説。
毎月の生活費を把握しておくことは、現在の家計はもちろん、将来的な資産形成を考えるうえでの第一歩となります。
1人暮らしの方が結婚や同居で2人暮らしになり、さらに子どもが生まれて3人、4人と家族が増えた場合、生活費はいったいどのように変化していくのでしょうか。
家計管理のポイントやライフイベントでかかる費用などをファイナンシャルプランナー(FP)の中垣香代子さんに伺いました。
目次
シミュレーションの前に自分の収支を確認。
2人暮らしや、子どもが生まれて4人暮らしになった場合、生活費はどれくらいかかるのでしょうか。
「自分たちと比較したい」「平均値を知りたい!」という方も多いかもしれませんが、中垣さんは「2人暮らしといっても、世帯ごとの収入や家計のサイズ、生活レベルなどによって大きく変わるので、他人のことはあまり気にしなくていいと思いますよ」と話します。
「まず、本来気にすべきことは、我が家の生活が年収に見合った家計サイズになっているかどうか。収入が多いのに生活費も多くて毎月赤字になっている人もいれば、収入が少なくても生活費を抑えて、しっかり貯金できている人もいます」
そこで、中垣さんがおすすめしているのが、生活費の金額ではなく、水道光熱費や通信費、交通費といった「各費目の割合」を平均値と見比べてみること。
「自分たちは、平均に比べてどの費目が多くて、どの費目が少ないか、一度見てみてもよいでしょう。ただし、平均値に合わせることが正解ではありません。食事を大切にしたい人もいれば、教育費をかけたいという人もいるでしょう。何かにお金をかけたいと思えば、そのぶんほかの何かを抑える必要があります」
支出の費目や貯蓄率などが気になる方は、こちらの記事もご覧ください。
同居人数別の支出割合。
1人暮らし、2人〜5人暮らしの場合、支出の割合はどのようになるのでしょうか。データをもとに、平均値を見てみましょう。
出典:人事院 令和3年4月の標準生計費算定方法(総務省「全国家計構造調査」、「全国単身世帯収支実態調査」および「家計調査」令和3年4月の費目別、世帯人員別標準生計費をもとに算出)
※各費目内訳
食料費……食料
住居関係費……住居、光熱・水道、家具・家事用品
被服・履物費……被服および履物
雑費1……保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽
雑費2……その他の消費支出(諸雑費、こづかい(使途不明)、交際費、仕送り金)
「住んでいる地域やエリアによって家賃などの住居費相場も大きく変わりますし、どこにお金をかけたいかというのは、人それぞれ異なります。あくまでも参考としてとらえ、自分の場合、自分の家族の場合はどうしたいかと考えるきっかけにしてみてください」
お金がかかる費目に変化があるケースも。
社会情勢などの影響で、変化した費目はあるのでしょうか。
「みなさんにも共感いただけるかもしれませんが、コロナ禍で外食費が減って、自宅での食費が増えました。ただ、私のところに相談に来られる方の傾向としては食費・外食費の合計はさほど変化がないんですね。
一方で洋服代・レジャー費・旅行代などが減っている方は多いのですが、減ったからといって、そのぶんをほかのことに使って家計を組み立てないように要注意。
なぜならば、いずれコロナが終息して今までどおりの生活に戻ったときに、お金が足りなくなってしまうから。コロナ禍で余裕ができた費用があれば、それは貯蓄に回しておきましょう。いずれ旅行や帰省ができるようになったときに使えるよう、節約しておくとよいでしょう」
共働きの家庭の、お財布管理のコツ。
同棲中のカップルや共働きの家庭では、お財布を一緒にするのか、それとも分けるのか、どちらがよいかと迷う方も多いでしょう。
「どちらが正解というのはありません。一度試してみて、管理しやすい方法が一番です」と中垣さん。
「2人にとって管理しやすい方法のほうが長続きしますから、まずはどちらか試してみることがおすすめです。その際、もっとも気を付けたいのがお互い貯金していると思っていたのに、“どちらもためていなかった”という状態。お互いの収支をすべてオープンにする必要もありませんが、秘密にしてしまうのもよくありません。
生活費としていくらかかっているのか、ある程度見える形にしておくと、スムーズにいくケースが多いようです。それには、将来必要になる金額を2人で考えて、その貯蓄の計画を立てて、しっかりためていくことが大切です」
2人暮らしの費用の管理方法を詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
夫婦それぞれの収入金額に合わせて、管理する支出を分担する。
結婚して子どもができた場合、子どもの教育費が大きな支出の1つになります。どのように準備して、管理していけばいいのでしょうか。
「私がおすすめしているのは、お子さん専用の口座をつくることです。お子さんが2人以上いる場合は1人ずつ、つくってもいいですが、手間がかかると感じる場合は、教育費としてまとめて1つの口座でも構いません。専用口座に入れたお金で、学費や習い事代、塾代などの、“教育費”をすべて賄うようにするのです。
子どものためのお金を準備する方法としては、共働き夫婦なら、夫婦でお金を口座に入れる方法と、片方が教育費担当になる方法があります。夫婦でお金を入れる場合は、収入の比率に合わせてもいいでしょう。
ちなみに私の友人夫婦の話ですが、片方が子どもの教育費担当、もう片方は住宅費担当と分けているケースもあります。誰かに押し付けられた方法ではなく、夫婦で話し合って納得した方法が、無理なく続けやすいと思います」
キャッシュレス時代は家計簿アプリなどを活用して。
令和になり、キャッシュレス決済を利用する人が増えてきました。
「世の中が現金メインだった時代は、1か月で使えるお金を週ごとに分けて、1週間分をお財布に入れて、月末に使えるお金がなくならないように管理していくという方法をおすすめしていました。
ただ、令和になって急激にキャッシュレス化が進み、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などで支払うケースが増えています。キャッシュレスは目に見えてお金が減っていかないため、家計管理がしにくくなっていますが、最近は家計簿アプリも進化していますので、活用するのもよいでしょう。
家族みんなで共有できるタイプの家計簿アプリもあるので“あとどれくらい使っていいか”が可視化されることで、家族みんなの無駄遣いも減るはずです」
参考:経済産業省 2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました(2024年3月29日発売)
いずれの方法にせよ、支出を可視化して見直すことが大切だといえそうです。
ライフイベントでかかる費用をシミュレーション。
結婚式・新婚旅行・出産・教育・住宅購入・介護など、ライフイベントでいくらお金がかかるのかも気になるところ。統計データなどで費用感や内訳を把握しておくことも将来のために役立ちます。
結婚式から新婚準備、出産などにかかる費用。
「結婚式の費用は会場などによって異なりますが、約250万円だとか。ただ、最近は手づくり感がある形で、もう少し安く抑えている方が多い印象です。
また、新婚生活の準備には、荷物の量や距離によって異なりますが、引っ越し代などで約10万円以上。その他、家電や家具の購入費などがかかることをお伝えしています。
出産費用は、健康保険から50万円の出産育児一時金が出るので、それほど負担はありません。個室の利用や無痛分娩など、施設や出産方法が異なれば、一部費用が自己負担となります」
参考:経済産業省 結婚式場業の概況 形態別、就業者規模別挙式・披露宴1件当たりの売上高 P4
参考:関東運輸局 引越しのモデル運賃・料金
参考:厚生労働省 出産育児一時金の支給額・支払方法について
結婚や出産にかかる費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
子どもの教育費の目安。
さらに、教育費は、小学校から大学まで、一般的にどれくらいかかるのでしょうか。
「オール国公立で1,000万円、オール私立で2,400万円程度とお伝えしています。理系学部や大学院進学などを選べば、さらに増えます。海外への留学を選択すればさらに教育費がかさむことになります」
参考:文部科学省 平成30年度子供の学習費調査
参考:日本政策金融公庫 教育費負担の実態調査結果(2020年10月30日発表)
子供の教育費について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
住宅購入費は将来を見すえて検討。
人生最大の買い物といえば、住宅や土地といった不動産。エリアや物件の間取りなどによっても異なりますが、一般的には住宅購入費はどれくらいかかるのでしょうか。
「住宅金融支援機構の2020年度フラット35利用者調査によると、全国平均値では、注文住宅が約3,534万円、建売住宅が約3,495万円、マンションが4,545万円という結果でした。実際にはこの平均値を見て考えるというよりも、“この住宅を買いたい、でも住宅ローンが組めるだろうか”と、より具体的に課題をもって相談に来られる方が多いです」
「住宅ローンを組む際には、年収などを見て“これだけローンが組めますよ”と言われることになりますが、“返済できるかどうか”を、一生涯の収入と支出をきちんとみながら検討する必要があります。憧れの住宅を購入したのに、生活が厳しくなって手放さざるを得なくなることのないように、慎重に考えたいですね」
身の丈以上の物件を買って、老後資金がなくなることのないように、しっかりマネープランを立てる必要がありそうです。
参考:住宅金融支援機構 「2020年フラット35利用者調査」
老後の住居について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
人生100年時代の到来で気になる親の介護費用。
長寿社会となった今、親の「介護費用」も気になります。いつ、どのような介護が必要になるかはわからないものですが、一般的にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
「厚生労働省による調査では、介護保険による介護給付受給者1人当たりの平均費用額は月19万7,000円です。この金額の1割〜3割が自己負担額となります。自己負担額の割合は介護を受ける本人の所得に応じて決められます。介護の期間は実にさまざまです」
参考:厚生労働省 介護給付費等実態統計月報(令和2年1月審査分)
参考:厚生労働省 介護保険の解説
ライフイベントの費用は逆算しよう。
人生100年時代となった今、さまざまなライフイベントがあり、それにかかる費用もトータルでは大きくなります。長い人生においては、ゴールから逆算して先々の費用を考えることが大切です。
「“こんなおうちで、こんなふうに過ごしたい” “子どもにこういう教育をして、こうなってほしい”といった目標を先に定めること。そこからかかるお金について確認して、逆算して今から貯金していくイメージです。
たとえば、お子さんが公立小学校に通われているご家庭では、学費がほぼかからないので、収入をめいっぱい生活費に使っているという方にも出会います。ですが、お金がかからないうちに貯蓄にまわしておかないと、大学の費用がためられなくなってしまいます。そのため、できるだけ早いうちから、将来どんなイベントがあって、どんな目標を立てたいかを、家族で話し合っておくことをおすすめします。コツコツためていくことが難しいとわかれば、目標を見直す必要もあるかもしれません。逆に、もっとためられそうなら、将来たくさんお金を使うプランを立てるのも楽しいですね」
【まとめ】他人と比べず家族と話し合って。
家族が増えるということはそれだけライフイベントが増え、出費もかさみます。他人が何にどれくらいお金を使っているかは気になるものですが、データや平均値はあくまでも参考にして、自分の場合や自分の家族の場合はどこにどのようにお金をかけたいか、よく考え、話し合うことが大切です。
写真/Getty Images
中垣 香代子
老後のお金を一緒に考える事務所所長。大手損害保険会社に勤務後、結婚と同時に退職。3人の子育てに専念した後、2013年にファイナンシャルプランナーの資格を取得。現在はFPフローリストのメンバーとして、教育費・住宅ローン・老後費用・相続など、不安の波を安心にかえるアドバイスを行う。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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