

自己都合で休職するには?給与はどうなる?勉強や留学による休職の注意点。
会社員として働く20代~30代の中には、「キャリアアップのために勉強したい」「一度は海外で生活してみたい」などの理由で、会社を一定期間休職したいと考えている人もいるのではないでしょうか。
こうした休職は「自己都合の休職」という扱いになりますが、実際に取得する場合、どのようなことに気を付ければよいのでしょう。社会保険労務士であり、キャリアコンサルタントとしても活動する岡本尚美さんに、自己都合休職の制度や取得する場合の注意点などについてお話をうかがいました。
目次
- そもそも休職って?代表的な休職の種類。
- 自己都合休職を取得する前に。会社に制度があるか確認!
- 自己都合休職を取得する場合の注意点。
- 【体験談】留学を理由に、休職を検討した原田さん(仮名)の場合。
- 【まとめ】周囲と相談を重ねて、納得のいく選択を。
そもそも休職って?代表的な休職の種類。

そもそも休職とは、「従業員の個人的な都合による長期的な休みを、会社が認める制度」のこと。休職の制度は「どの会社も必ず作らなければいけない」と法律で決まっているわけではなく、会社の判断で制度を作るかどうかや、その内容を自由に決めることができます。
休職にはいくつか種類がありますが、中でも取得するケースで 多いのは「自己都合休職」と「私傷病休職」の2つです。それぞれ簡単に解説します。
自己都合休職
自己都合休職とは、従業員が個人的な事情に基づいて長期間の休暇を取得する制度を指します。
この制度の具体的な取得目的としては、ボランティア活動、資格取得、留学などが挙げられます。また、近年では配偶者の海外赴任への帯同や不妊治療のために、自己都合休職を認める企業もみられます。
この制度の運用状況は企業によって大きく異なります。一部の企業では、「ボランティア休暇」や「留学休暇」といった明確な名目で制度が設けられていることがありますが、多くの場合「その他会社が必要と認めた場合」といった形で柔軟に対応することが一般的です。休職期間についても、企業の裁量で「会社が必要と認めた期間」と定められていることが多いのが特徴です。
自己都合休職は、単なる「自分の都合」では取得が難しい場合がありますが、たとえばスキルアップや自己啓発を目的とする場合でも、会社がその後の業務に役立つと判断すれば認められることもあります。取得を希望する際は理由を明確にし、上司や人事部門との相談を重ねることが重要です。
私傷病休職
私傷病休職は、持病などの業務外の理由による病気やケガの治療、療養をするための休みとして取得できるものです。
同じ病気やケガであっても、業務中の事故や業務に起因して発症した病気は「労働災害」に認定される場合があります。この場合、会社は原則として療養のために必要とする期間は従業員を休ませなければいけません 。
自己都合休職を取得する前に。会社に制度があるか確認!

先述したように、休職制度の整備は会社に義務づけられているものではありません。そのため、まず自分が働く会社に自己都合休職の制度があるかどうかを確認しましょう。
会社に休職制度がある場合は、手続きや規則の詳細を知る必要があります。就業規則には、自己都合休職が認められる条件や、休職できる期間が書かれている場合があります。自分の休職理由が会社に認められるか、取得できる期間はどれくらいか、休職を申し出る時期などを確認しましょう。
自己都合休職を取得する場合の注意点。
自己都合で休職する場合、いくつか注意すべき点があります。取得を決めてから困らないように、以下の項目をチェックした上で検討しましょう。

給与・賞与は発生しない。
休職期間中の給与や賞与は支払われないのが一般的です。そのため、収入がなくても生活できるだけの貯蓄をしておく必要があります。数日~数週間の短期間であれば有給休暇の取得で対応することを検討してもよいでしょう。
社会保険料の支払いはある。
給与はなくても社会保険料の支払いは継続します。厳密にいえば、休職期間中は雇用保険料と所得税は発生しませんが、厚生年金保険料と健康保険料、介護保険料(40歳以上の場合)は支払いが必要です。
キャリアに影響が出ることも。
休職して留学などをした場合、個人の人生にとっては貴重な期間になる可能性がある一方で、復職した際にその経験を活かしてキャリアアップができるかどうかは会社次第です。
また、休職期間は勤続年数としてカウントされず、退職金や会社の昇格要件などに影響する場合があります。会社によって休職中の取り扱いは異なるので、よく確認しましょう。
休職中も会社とは連絡をとれる状態に。
休職期間中は、あくまでも従業員としての籍は会社に残っている状態です。休職中の様子を会社から確認される場合があるので、連絡はとれる状態にしておけるとよいでしょう。また、休職中に副業をしてトラブルになるケースもあるため、休職中の過ごし方については会社に確認しておきましょう。
【体験談】留学を理由に、休職を検討した原田さん(仮名)の場合。

自己都合休職を検討する際には、休職までの計画の立て方がわからず、悩む方も多いでしょう。自己都合休職を実現させるには、会社への相談と準備を重ねることが大切です。
ここでは、実際に語学留学を目的とした休職を検討した原田さん(仮名)のエピソードをご紹介します。原田さんのケースから、休職を検討する際に注意すべきポイントを考えてみましょう。
「もう一生長期で休むことはないのでは」と、フィリピンへの語学留学を決意。
私は語学留学をするために、会社を35日間休みました。「会社を退職しない限り、もう一生長期で休むことはないのでは」と思ったのが休職のきっかけです。30代で、周囲の友人や同僚が結婚や出産、転職など、ライフステージや環境の大きな変化を経験している中にいたことも影響しました。
そして、せっかく長く休むなら、学生時代に留学経験がなかったので海外で生活をしてみたいと思い、フィリピンの語学学校へ行くことを決めました。

留学の4か月ほど前に、休職したい旨を上司に相談してみたところ、会社には自己都合休職の制度がないことがわかりました。新たに制度を作れないか、考えていただいたのですが、結果的にすぐに対応してもらうことは難しく、有給休暇と欠勤で休みをとることになりました。
休職する期間は、所属チームへの影響がなるべく少なくすむよう、繁忙期は外しました。
休職中のお金について、私の場合は有給休暇を使ったこともあり、幸い金銭面での負担はあまり感じませんでした。ですが、留学の期間が半年や1年以上だったら、金銭的な不安は大きかったと思います。
家賃が日本と留学先の両方で必要だったり、場合によっては日本の家を引き払わなければいけなかったりするので、そういったことも考慮する必要があると思います。(原田さん)
【まとめ】周囲と相談を重ねて、納得のいく選択を。
ここまで、岡本さんによる解説と、原田さんの体験談をお届けしました。原田さんのように、「もう一生長期で休むことはないのでは」という思いを抱いたことがある方も多いのではないでしょうか。休職を実現するために、周囲と相談し、計画を立てることの重要性が伝わる体験談だったかと思います。
近年、徐々に多様な働き方や仕事との関わり方が認められるようになってきました。たとえ会社に自己都合休職の制度がなくても、相談をきっかけに新たな規則が生まれたり、特例が認められたりするかもしれません。
一方で、会社に自己都合休職の制度があったとしても、それを盾にして独断で自己都合休職を申請することは、周囲からの印象を損ねる可能性があります。
いずれにしても、職場の上司や同僚、人事と十分に相談を重ねた上 で申請を進めることが、自己都合休職を成功させるポイントとなるでしょう。この記事の内容を参考に、自分自身のキャリアや、人生における選択肢を広げるために、納得のいく決断をしていただければ幸いです。(ミラシル編集部より)
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
【監修者】岡本 尚美
社会保険労務士・キャリアコンサルタント。電機メーカー営業、労働組合での勤務を経て社会保険労務士事務所で実務経験を積み、2014年4月開業。得意分野は仕事と育児・介護などとの両立支援に関するコンサルティング。周囲への理解と対象者以外にも広がる働き方の変化を大切にしたサポートを心がけている。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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