公認会計士・税理士YouTuberの山田真哉さんに聞く、気になる「身近なお金」のこと
“検索したことはある”けど“結局よくわからなかった”を「なんとなくわかる!」に変える、お金の知識を学べるマネーバラエティ『もっと!マネバラっ!』。ゲストと視聴者さんがお金について一緒に学べる、生配信のオンラインイベントです。
今回はVTuber/バーチャルライバーグループのにじさんじの8名と、公認会計士・税理士YouTuberの山田真哉さんをゲストに迎え、全4回にわたってお金にまつわるお話をお届け。最終回となる第4回は不破湊さんと三枝明那さんと一緒に「身近なお金」について学びました。
※配信の様子はこちらからご覧いただけます。
本記事では、第4回のイベントを終えた公認会計士・税理士YouTuberの山田真哉さんに「身近なお金」というテーマで、給与明細の見方について詳しく伺いました。初心者の方にも理解してもらえるよう解説していますので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください!
1.「身近なお金」について考えてみよう
──山田さん、今回のテーマは「身近なお金」です。前回は「将来のお金」で、今回は「身近なお金」。前回と同じように、まずはどのようなお金のことを指すのか教えていただけますか?
「身近なお金」というのも前回同様、少し漠然としていますよね。身近というと、毎日の生活費や預貯金など、私たちが日頃から意識し触れることが多いお金のことをイメージする方も多いのではないでしょうか。私たちの身近には、お金と関係性が深いことはたくさんあります。今回は、特に私たちが暮らす中で必ず触れたことのある「給与明細」を身近なお金を示すひとつの例として解説していきます。
──「身近なお金」というテーマの中で、山田さんが給与明細の解説をメインに据えた理由はなんでしょうか?
給料は、私たちが生きる上で一番の柱となる「身近なお金」ですよね。そんな大切な給料ですが、内訳を示す給与明細にしっかり目を通す人は少ないのではないでしょうか。
かく言う私も、会計士になる前は差引支給額しか見ていませんでした。 控除額の内容はどのようになっているのか、勤怠日数は合っているか、差引支給額は正しいか、そういった記載をいつも気に留め確認する、という習慣はあまりないかもしれません。ですが、会社から支払われる給与の証明書でもある給与明細は、私たちにとってとても重要なものなんですよ。
──なぜ給与明細とその見方が私たちにとって大切なんでしょうか?
給与明細には、生活を支えるお金の詳細が記されています。記載に誤りがあるだけで、生活費や支払い計画に影響が出ますよね。また、社会保険料や税金など、収入が上がるに応じてその金額が上がっていくものもあります。そんな数字の変化を把握しておくことも、計画的にお金を貯めていく、または運用するためには大切だと言えます。そんな給与明細の構成要素を詳しく解説していきますね。
2. 給与明細を構成する4つの項目を解説
──それでは、その給与明細の構成要素を教えていただけますでしょうか?
はい。「給与明細」は、以下のような4つの項目から構成されています。
1. 支給
「支給」には、基本給をはじめ、残業手当や通勤手当、資格手当といった各種手当など、会社からの総支給額が記載されています。いわゆる「額面」と言われるもので、年収もこの支給額の12か月分を示します。
2. 控除
「控除」は、社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険)や税金(所得税、住民税)といった給与から差し引かれる金額です。会社にお勤めの場合は、会社が税金を納める源泉徴収を行うため、給与から社会保険料や税金を差し引くのです。住民税は前年の所得に対して課せられるため、一般的に社会人2年目から差し引かれます。 社会保険と税金の種類は以下の表のとおりです。
3. 差引支給額
「差引支給額」は、一般的に手取りと言われます。私たちの銀行口座に振り込まれる金額ですね。差引支給額は、総支給額-控除額で算出できます。給与明細をもらった後、この数字だけ見る、という人も多いのではないでしょうか。念のため、数字が間違っていないか確認するクセをつけておくといいでしょう。
4. 勤怠
勤怠の欄には、労働日数や欠勤日数、有休取得日数、残業時間などの勤務状況が記載されます。会社によっては、深夜時間や休日労働時間なども記載されます。手取りに影響を与える箇所ですので、内容に間違いがないかしっかり確認しましょう。また、給与明細に記される期間は、前月から今月の締め日までの期間です。会社によって締め日も異なりますので、そこも確認しておきましょう。
──「控除」に含まれる雇用保険や住民税については、イベントでもクイズに絡めて解説いただきました。
まさに「聞いたことはあるものの、よくわかっていない人が多い」部分ですよね。イベントでもお話ししましたが、雇用保険の手当のひとつに失業手当があり、これは安定した生活を送りつつ再就職をスムーズに進めるための公的な支援制度です。具体的には、90日〜360日間、給与の約50%〜80%が支払われます。住民税は、前年度所得の約10%を居住地域へ納める税制度です。ここで言う居住地域とは、その年の1月1日時点で住民票の登録がある地域であり、住民票が海外にある場合は日本で住民税を納める必要がありません。
3. 給与明細、見るべきポイントはどこ?
──なるほど。この要素の中で私たちが特に意識してチェックする項目はどこになるんでしょう?
基本的には全部と言いたいんですが……ここではポイントを絞ってお伝えしますね。
ポイント1. 支給額と控除額をしっかり確認
総支給額、控除額を見比べて差引支給額に誤りがないか、をしっかりと確認しましょう。給与がアップした直後や、扶養人数が変わった後などは特に確認が必要ですね。なぜなら、社会保険料や所得税は収入に応じて変化するからです。社会保険料や所得税が一律ではないことを把握し、自分でも計算してみると、給与の全体像がつかめますよ。
ポイント2. 勤怠実績に誤りがないか確認
働いた時間、残業日数や欠勤数など、1か月を振り返って誤りがないか確認することも大切です。これは給与に正しく実績が反映されているか、ということでポイント1の支給額にも関わってくるためです。
給与明細は最低5年保管を!
給与明細は収入を証明するための手段となります。たとえば、住宅や車のローンを組むとき、開業資金の借り入れなどをするときは、源泉徴収と共に直近5年以内の給与明細の提出を求められる場合があります。
また会社からの給与に誤りがあった、もしくは支給されない、といった事態でも給与明細は未払い請求するための重要な証拠となります。これらのケースに備えるため最低5年間は給与明細を保管しておくと安心です。
──ちなみに……山田さんは、給与明細を見ることがどのようなことに役立つとお考えですか?
世の中には、詳しく知っておくと役立つことがたくさんあると思います。お金もその一つであり、給与や税金の仕組みを知ることで、ライフプランが立てやすくなるかもしれません。例えば入籍日。12月31日までに入籍し、所得条件を満たしていれば、次の1年間は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けることができるんです。
このように、給与や税金の仕組みを理解することは、税負担の軽減や資産形成にもつながります。お金の管理の第一歩として、まずは給与明細の確認から始めてみるといいのではないでしょうか。
4. 不破湊さん&三枝明那さんとイベントをご一緒してみていかがでしたか?
──イベントはとうとう最終回を迎えました。今回ご一緒した不破さんと三枝さんにはどのような印象を持ちましたか?
今回ご一緒したにじさんじのメンバー全員に言えることですが、反射神経と理解力がすごいですね。不破さんの失業保険に関する質問や、三枝さんの源泉徴収に関する質問など、お二人の鋭い質問によって視聴者の皆さんの理解も深まったと思います。
──イベント中、特に印象に残ったシーンはありますか?
今回のイベントではクイズを4問出題しましたが、クイズって、実は間違えてもらったほうが解説しやすいんです。2問目の厚生年金保険に関する問題はお二人とも不正解でしたので、より厚みのある解説ができたのではないかと思いますね。視聴者の皆さんも迷っていた方が多く、ちょうどいい難易度の問題を作れて良かったと思っています。
──『もっと!マネバラっ!』は今回が最終回になります。私たちも寂しい気持ちが強いですが、山田さんは全4回のイベントを振り返っていかがでしたか?
世の中には知っておいて損はない知識がたくさんあり、お金もその一つです。「推しが出ているから」という理由でライブ配信を見られた方が多かったと思いますが、今回のイベントが、お金の勉強をする一つのきっかけになったなら幸いです。
ふるさと納税から、円安・円高、NISAやiDeCo、給与明細の見方まで、毎回さまざまなテーマを設けて「お金の基本」を解説してきました。もし次回があれば、さらに面白いテーマを用意してにじさんじと視聴者さんを盛り上げたいと思っています!
第4回イベントのアーカイブ配信や記事はこちらからご覧いただけます。
もっと!マネバラっ!第4回のテーマである「身近なお金」いかがだったでしょうか? 給与明細を確認することの大切さが山田さんのお話からよく分かりました。皆さんもぜひこの機会に、給与明細をじっくり見てみてくだいね。
「もっと!マネバラっ!」では第1回「ふるさと納税」第2回「お金の基本」、第3回「将来のお金」についても学びました。
各回アーカイブもございますので、ぜひご視聴ください!
山田 真哉
大阪大学文学部卒業後、東進ハイスクール勤務を経て、公認会計士に転身。著書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は160万部突破のベストセラー、YouTube「オタク会計士ch」は登録者数70万人超に。講演では、貯蓄、投資、税務全般について分かりやすく解説し好評を得ている。
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