保育園と幼稚園の違いは何?それぞれの特徴と費用を解説。
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小さいお子さんを持つ方の中には、子どもの預け先を保育園・幼稚園のどちらにするか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。
それぞれどんな特徴があり、費用はどう違うのか、どう選んでいけばいいのか。また、もう1つの選択肢として認定こども園についてはどう考えればいいのでしょうか?お子さんを保育園・幼稚園に通わせていたママでもある、ファイナンシャルプランナーの宮野真弓さんが解説します。入園をきっかけに考えておきたい、将来の教育費についても伺いました。
※ この記事では、「子ども・子育て支援法」で規定された「保育所」のうち「認可保育園」を例に、「保育園」として説明しています。
目次
- 保育園と幼稚園はどんな違いがある?
- 保育園と幼稚園、費用の違いは?
- 標準の利用時間を延長するときは?
- 認定こども園とは?
- 保育園と幼稚園で学力差はあるの?
- 共働き世帯なら?選び方のポイントは?
- 子どもの教育資金は計画的に準備を。
- 保育園・幼稚園選びは、将来の教育費について考えるタイミング。
保育園と幼稚園はどんな違いがある?
保育園・幼稚園は小学校に上がる前の子どもが通う施設です。2006年からは保育園・幼稚園両方の機能を持った「認定こども園」も加わりました。まずは、保育園と幼稚園の違いについてみていきましょう。
それぞれどんな制度なの?
保育園は児童福祉法にもとづいて設置された厚生労働省所管の児童福祉施設、幼稚園は学校教育法にもとづいて設置された文部科学省所管の学校教育施設です。
参考:文部科学省「いわゆる『幼稚園と保育所の一元化』について」(2022年)
それぞれの主な特徴は?
保育園・幼稚園それぞれの対象年齢や条件など、主な特徴を解説します。
保育園 | 幼稚園 | |
対象年齢 | 0歳児から小学校就学前まで | 満3歳~小学校就学前まで ※私立幼稚園では、2歳児クラスを設けている園もあり |
入園条件 | 保護者が仕事や通学、病気などの理由で子どもの保育の必要がある場合 | 入園を希望する者 |
利用時間 ※ 一般的な利用時間につき、施設ごとに違いあり | 保育標準時間7:30~18:30、 延長保育時間18:30~19:30 | 9:00~14:00の範囲内で4時間程度。預かり保育は降園後~18:30 |
休園日 | 日曜・祝日・年末年始 | 土曜・日曜・祝日、夏・冬・春休み |
利用の申込窓口 | 各市区町村の担当部署 | 各幼稚園に直接申し込む |
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
そのほかにも違いがある?
実際に入園してみると、保育園と幼稚園では、送迎・給食・お昼寝などに違いがあります。
保育園 | 幼稚園 | |
送迎 | 基本的には保護者が施設まで送迎 | 送迎バスがあるところが多い |
給食 | 給食 | 給食・お弁当持参・給食とお弁当併用、のいずれか |
お昼寝 | 昼食後にお昼寝の時間あり(保育時間が長いため) | なし |
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
保育園と幼稚園、費用の違いは?
保育園と幼稚園、それぞれにいくらくらいかかるのかをみていきましょう。
利用料は子どもの年齢によって異なる。
保育園・幼稚園ともに、3歳児クラスからの利用料は2019年10月から「幼児教育・保育の無償化(以下、幼保無償化)」により無償となっています(※)。保育園の0歳児~2歳児クラスの利用料は、保護者(世帯)の住民税所得割額やきょうだいの状況などに応じて市区町村ごとに定められています。
※ 「子ども・子育て支援新制度」の対象とならない幼稚園は、園ごとに定めた利用料と入園料(月割)をあわせて月額2万5,700円までが無償。超えたぶんは保護者負担となります。新制度の対象園かどうかは市区町村で一覧を公表しています。わからない場合は、幼稚園に問い合わせましょう。また、2歳児から受け入れの幼稚園では、年度途中に子どもが満3歳児となると無償になります。保育園は、3歳児クラス(満3歳になったあとの4月)からが無償となります。
参考:こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化について(日本語)」(参照:2023年12月27日)
保育園の費用はどのくらい?
0歳児~2歳児クラスの保育園利用料は、先述したとおり世帯の所得などに応じて数段階の利用料が設定されます。各段階の水準は国が定めており、生活保護世帯の0円から、上限は10万4,000円まで。ただし実際の保育料は、国の水準を超えない範囲で自治体ごとに定められているため、自治体によって差があります。
また、2人目の子どもは半額、3人目以降の子どもは無償となり、さらに独自の負担軽減を行っている自治体もあります。
保育料が無償となる3歳児クラス以上では、利用料以外の給食費やその他費用は原則保護者の負担となりますが、一部を自治体が負担している場合もあります。子育て支援に力を入れている自治体などでは、独自の支援を手厚く行う傾向がみられます。
参考:内閣府・文部科学省・厚生労働省「子ども・子育て支援新制度 ハンドブック」(2015年)(参照:2023年12月27日)
保活のスケジュールや準備について知りたい場合はこちらの記事もご覧ください。
幼稚園の費用はどのくらい?
文部科学省が隔年で実施している「子供の学習費調査」によると、幼稚園に通う子ども1人あたり1年間の幼稚園への支払額平均は、幼保無償化開始前の2018年度は公立幼稚園約14万円、私立幼稚園約36万2,000円でした。
幼保無償化開始後の2021年度は、公立幼稚園約7万5,000円、私立幼稚園約16万5,000円と2018年度の約半分になっています。
参考:文部科学省「平成30年度 子供の学習費調査」
参考:文部科学省「令和3年度 子供の学習費調査」
そのほかにかかる費用は?
保育園は給食があるため給食費がかかりますが、0歳児~2歳児クラスの給食費は利用料に含まれます。3歳児クラスからの給食費は実費を保護者が負担します。園によっては行事費・保護者会費・お昼寝用の寝具の購入またはレンタル代・体操服や通園バッグ代・紙おむつの処理費用などがかかる場合もあります。
幼稚園では利用の有無や園の方針によって、送迎バス代・給食費・教材費・制服代・バッグ代・行事費・保護者会費などがかかります。
また、幼稚園では希望者を対象に降園後の時間に園内で習い事を行っている園もあります。月謝や教材費などが別途かかりますが、習い事が終わる時間に子どもを迎えに行けばよいため、後述する「預かり保育」の代わりに利用する保護者も多いようです。
標準の利用時間を延長するときは?
多くの保育園・幼稚園では利用時間を延長することができます。その場合、別途利用料がかかります。
保育園の延長保育料。
保育標準時間(※)を超えて利用する場合は、延長保育料がかかります。延長保育料は保育園の開いている時間や利用時間、自治体の基準によって異なります。
※ 最長11時間、具体的な運用は自治体によって異なります。
参考:こども家庭庁「よくわかる『子ども・子育て支援新制度』」(参照:2023年12月27日)
幼稚園の預かり保育利用料。
標準の利用時間後も引き続き子どもを預けることができる「預かり保育」を行っている幼稚園もあります。利用時間に応じた費用がかかります。市区町村から就労などによる保育の必要性の認定を受けると、月額1万1,300円までが無償となります。
参考:こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化について(日本語)」(参照:2023年12月27日)
認定こども園とは?
保育園不足や待機児童の解消、就学前の教育・保育ニーズの多様化に応えることなどを目的として、2006年に登場したのが内閣府管轄の「認定こども園」の制度です。
認定こども園は、幼稚園と保育園、両方の機能を兼ね備えた施設で、公立と私立があります。4つのタイプがあり、幼稚園の設置基準を満たす「幼稚園型」、認可保育園の設置基準を満たす「保育所型」、幼稚園・認可保育園両方の基準を満たす「幼保連携型」、市区町村の基準による「地方裁量型」です。
保育料は、0歳児~2歳児は認可保育園と同様に保護者の住民税所得割額に応じた金額、3歳児~5歳児は無償です。
参考:内閣府・文部科学省・厚生労働省「子ども・子育て支援新制度 ハンドブック」(2015年)(参照:2023年12月27日)
参考:こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化について(日本語)」(参照:2023年12月27日)
利用条件などは、保育の必要性があると認められた子ども(0歳児~)が保育園機能を利用する場合は保育園に準じ、保育の必要性を認められない子どもが幼稚園機能を利用する場合は幼稚園に準じます。
保育園と同様に幅広い年齢の子どもが通い、交流する機会が多い認定こども園。途中で親が仕事を辞めるなどで、保育の必要性が変化した場合も転園する必要がなく、引き続き通いなれた園で教育・保育が受けられるという特長があります。
参考:内閣府子ども・子育て本部「子ども・子育て支援新制度について」(2022年)(参照:2023年12月27日)
保育園と幼稚園で学力差はあるの?
「保育園出身の子は、小学校に上がってから勉強で苦労するのでは?」と心配する方もいらっしゃるようです。保育園は児童福祉施設、幼稚園は教育施設、という位置づけから、そんなイメージが生じたのかもしれません。保育園も幼稚園も認定こども園も、乳・幼児期の特性にあわせて、環境を通して教育を行うことを目的として掲げています。
幼稚園出身者と保育園出身者の学力差については、次のような研究結果があります。発達心理学者の内田伸子氏は、2012年に東京・ソウル・上海の3歳児~5歳児計3,000人とその保護者・保育者に臨床面接調査を行い、その子らが小学生になるまで学力を追跡調査しました。
学力と家庭の所得には相関はある。しかし、因果関係を意味しているわけではない。経済格差と連動して動く学力低下をもたらす原因(媒介要因)が他にあるのではないか。経済格差は子どもの発達や親子のコミュニケーションに一体どんな影響を及ぼすのか。しつけスタイル、文化資源(蔵書数、知育玩具など)や通塾経験の有無にも影響を与えているのではなかろうか。これらの疑問を解くために、東京、ソウル、上海の幼児3、4、5歳児各1,000名、あわせて3,000名に個別の臨床面接調査を行い、リテラシー(読み書き能力)や語彙の豊かさを調べた。保護者や幼稚園・保育所の保育者にも、リテラシーや語彙の習得への配慮、通塾経験の有無、家庭でのしつけスタイル、幼稚園や保育園の保育形態などについてアンケート調査を実施した。同じ子どもたちが小学生になるまで追跡し、PISA型学力テストを受けてもらった(内田・浜野、2012)。
(中略)
関連する要因の全てを統制して、読み書きや語彙得点と諸要因のうちのどの要因が関連(相関)するかを明らかにするため共分散構造分析にかけたところ、読み書きや語彙と保育形態(一斉保育か自由保育か)には相関関係があり、自発的な遊びを大事にする「子ども中心の保育(自由保育)」の子どもの読み書きや語彙力が有意に高いということが明らかになった。
出典:公益財団法人日本学術協力財団「学術の動向2017年10月号」
編集部注:共分散構造分析とは、ある事象に対する因果関係の仮説を検証する分析手法。因果関係の向きと強さがわかる。
その結果から、「子どもの学力は、幼稚園か保育園かの違いや経済格差による影響よりも、子どもの主体性を大事にした共有型のかかわりによって語彙力や知識、自律的な思考力がより豊かに育まれていく」としています。
まさに、3人の子を育てている私もまったく同感です。特に乳幼児期は、学校のお勉強みたいに文字や数字を教えるよりも、子どもの興味や関心に寄り添ってあげると、また次の興味が広がっていきます。やりたいと思ったことを自分でやってみて、体の動かし方を身につけ、さまざまなことを学んでいくようです。
保育園と幼稚園のメリット・デメリットを比較検討するよりも、この園は子どもとどんなかかわり方をしてくれるんだろう?という視点で、お子さんに合った園を選んであげることが大事だと思います。
共働き世帯なら?選び方のポイントは?
子どもの預け先を保育園か、幼稚園か、認定こども園にするかは、仕事をするか、月間または1日あたり何時間くらい働くのかを明確にしてから検討するといいでしょう。就労はしないけれど子どもを預けてやりたいことがあるか、乳・幼児期は子どもと一緒に過ごす時間をできるだけ長くとりたいかなども、預け先を選ぶ際に考えておくことをおすすめします。
子どもの教育資金は計画的に準備を。
2019年から幼保無償化になったとはいえ、入園すれば何かとお金がかかるものです。保育園・幼稚園への入園を機に、子どもにかかるお金についてあらためて考え、子どもが小さいうちから将来の教育資金づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
大学までの教育資金づくりには学資保険が便利。
教育費は、子どもの高校受験や大学進学など、必要になる時期が明確なため、計画的に資金づくりを進めやすいといえます。
たとえば、大学進学に備えて子どもが18歳になるまでに、約400万円(※)の貯蓄を目標にするとしましょう。自治体から支給される児童手当をすべてためていくと約200万円(ただし、所得制限がない場合)。それにプラスして、0歳〜18歳まで毎月1万円ずつ備えていくと約200万円、合計約400万円になります。
※ 私立大学文系学部4年間の学校教育費407万9,015円(実験実習費などは含めない)をもとに算出。
参考:文部科学省「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」
参考:こども家庭庁「児童手当制度の概要」(参照:2023年12月27日)
毎月1万円ずつ預貯金で備えるとなると、18年のうちに心が折れてしまうこともあるかもしれません。学資保険であれば、申し込んでしまえば毎月口座振替されていくため、預貯金での貯蓄は苦手!という人でも取り組みやすく、続けやすい方法といえます。
ただし、学資金・満期保険金の受取総額は保険料の総額を下回る場合があります。また、解約返還金は多くの場合、保険料の累計額を下回ります。
将来、お金を理由に子どもの夢や目標を断念させるのは、親としては避けたいところ。なんとなく幼児期の習い事やレジャーで散財してしまうよりは、将来を見すえて、お子さんの学費づくりをなるべく早い時期から計画的にはじめてみることをおすすめします。
小学生の習い事を検討する場合は次の記事もご覧ください。
保育園・幼稚園選びは、将来の教育費について考えるタイミング。
保育園・幼稚園・認定こども園選びは、それぞれの違いを知ったうえで、個々の園ごとの方針や特徴、利用料をはじめとした費用などについてよく調べ、お子さんと家庭の状況にあわせて選んでいくとよいでしょう。
わが子の性格に合ったベストな保育園や幼稚園と言われても、子どもの年齢が小さいほどよくわからないというのが正直なところ。いろいろ比較検討して迷ったときの最終判断は、親にとってどちらが利用しやすいか、で決めていいと思います。
そして、保育園・幼稚園選びをきっかけに、子どもにかかるお金についてあらためて考えることをおすすめします。早いタイミングから計画的に、自分たちに合った方法で今後の教育資金づくりについて検討してみるといいでしょう。
学資保険について検討する場合は次の記事もご覧ください。
写真/Getty Images、PIXTA
宮野 真弓
FPオフィスみのりあ代表。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者。大学在学中にFP資格を取得し、証券会社・銀行・独立系FP会社を経て独立。不妊治療により3人の男児を出産した自身の経験を生かし、子どもを望む方や育児中の方などへ向けた講演や執筆、個別相談を中心に活動中。ライフプラン全般に対する提案のほか、子ども向けのマネー教育にも注力している。
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