「結婚しない人生」を選ぶメリットとデメリット。ひとりで生きていくための備えも解説。
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。
結婚を選択しない人たちが増えています。1990年には25歳~29歳の女性の未婚率が40.4%だったのに対し、2020年には65.8%に。2020年に30歳だった人の未婚割合は女性が40.5%、男性は50.4%と、半数近い数値になっています。一方、生涯未婚はロールモデルが少ないのでメリット・デメリットが見えにくく、制度も充実していないために老後の生活について心配がある人も多いのではないでしょうか。
そこで、「結婚しない」を選んだ場合のメリット・デメリット、老後の備えについて、ファイナンシャルプランナーであり結婚相談所の代表でもある斎藤和孝さんにうかがいました。
参考:
厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」
総務省統計局「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果」
内閣府男女共同参画局「令和4年版 男女共同参画白書」
目次
- 増える「結婚をしない」選択をする若者たち。
- なぜ「結婚をしたくない」?
- 結婚をしないことによるメリットは?
- 結婚をしないことによるデメリットは?
- 結婚しない場合の老後は? 自分ひとりの生活水準から必要資金を算出。
- 結婚しない老後には、「老後生活費の備え」と「コミュニティ」が大事!
増える「結婚をしない」選択をする若者たち。
内閣府の調査によると、20代で配偶者や恋人がいないと回答した人は女性が51.4%、男性が65.8%となっています。また、未婚の20代で「結婚の意思あり」と答えたのは女性が64.6%、男性が54.4%ですが、30代になると男女ともに46.4%で、半数を下回ります。
「20代で『結婚しない』と決めているのではなく、結果として結婚しなかった、という人が多い。適齢期を過ぎて未婚の方に聞くと『いい出会いがなかった』とおっしゃる場合が多いです」(斎藤さん)
参考:内閣府男女共同参画局「令和4年版 男女共同参画白書」「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書のポイント」
なぜ「結婚をしたくない」?
「結婚したくない理由」は、20代~30代の女性では「結婚という形式にこだわる必要性を感じない」「仕事・家事・育児・介護を背負うことになる」の順に多く、男性は「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定」「結婚という形式にこだわる必要性を感じない」の順に多くなっています。
「女性の社会進出が進んで経済的に自立すると、『何が何でも結婚をしなければならない』『〇歳までに結婚するのが当たり前』といった既存の価値観が薄くなる傾向があります。また、主に男性への『結婚していなければ出世できない』といった社会的なしがらみもなくなりつつあります。さらには、結婚して子どもができることで独身時より生活水準が下がることを危惧する人も多いようです。
一方で、『仕事と子育てを両立する人も増えている』という実態があるものの、子どもを預けられる保育園が少なかったり、男性が職場で育休を取りづらかったりといった現実的な課題が残ります」(斎藤さん)
参考:内閣府男女共同参画局「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査 報告書のポイント」
結婚をしないことによるメリットは?
「結婚しない」という選択をすると、どんなメリットがあるのでしょうか。すべての人にあてはまるわけではありませんが、経済的なものや自由時間など、いくつかのメリットがある、と斎藤さん。
自分の判断でお金が使える。
「自分の判断でお金が使えます。基本的には独身でいたほうが可処分所得が多いので、自由になるお金も増えます。結婚相手に相談しながら使い道を決めたりする必要がありません」
時間や行動に自由がある。
「さまざまな結婚のスタイルがありますが、結婚をするとほとんどの人が一緒に暮らすことになるでしょう。そのため、時間の使い方や行動に制限が生まれます。独身であれば、いずれも自分の責任で自由に決められます」
自由に恋愛ができる。
「独身であれば、そのときの嗜好でパートナーを選ぶなど、自由に恋愛ができます。ここに大きなメリットを感じる人もいるでしょう」
人間関係のわずらわしさがない。
「結婚をすると、盆や正月、冠婚葬祭など、親戚づきあいが増え、相手の親や兄弟とウマが合わないといったことが起こり得ます。こういった人間関係が離婚の要因になることもあり、生活の中で大きなウエイトを占めることはたしかです。独身であれば、パートナーがいても基本的に個人同士の付き合いになるため、親戚づきあいによる人間関係のわずらわしさは少なくなります」
結婚をしないことによるデメリットは?
一方、結婚をしない場合は特に、老後を迎えてからのデメリットやリスクが考えられるといいます。
家事などをすべて自分でやらなくてはならない。
「家族がいれば家事などを分担できますが、独身の場合は生活に関することをすべて自分でやらなくてはなりません。病気やケガをした場合も、病院の手配などは基本的に自分でやることになります」
子どもや配偶者を対象にした所得控除が受けられない。
「子どもや配偶者がいると、扶養控除や配偶者控除など税負担が軽減される制度がありますが、独身者の多くは子どもがおらず、その場合には配偶者だけでなく、子どもを対象にした所得控除なども受けられません」
賃貸物件の連帯保証人に困ることがある。
「賃貸物件を借りる場合、連帯保証人が必要なケースが多くあります。独身の場合、配偶者や子ども以外の人に保証人になってもらうことになりますが、両親や兄弟が高齢になっていたり、亡くなっていたりすると、簡単には保証人が見つからないケースもあるでしょう」
結婚しない場合の老後は? 自分ひとりの生活水準から必要資金を算出。
老後に必要な資金は人それぞれではありますが、今の収入や生活を基準に、一度老後に必要となる資金を計算しておくとよいでしょう。結婚をしない人は、夫婦2人ではなく、1人で老後の生活資金をたくわえる必要があります。一方で、家族にかかる支出がないぶん、アクティブに働いているころから資産形成を積極的に進められるという利点もあります。
厚生労働省が公表している「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、月々の年金平均受給額は、令和2年度末の時点で、国民年金がおよそ5万6,000円、厚生年金がおよそ14万6,000円。「年金だけで暮らすのは難しい可能性があります。会社員の人は厚生年金にも加入しているため給付の額は増えますが、それでも十分とはいえません」と斎藤さん。独身者はどんな備えが必要となるのでしょうか。
参考:厚生労働省年金局「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
働きながら生活水準を落とす工夫を。
平均寿命が延びたことで、「老後」といわれる年数が長くなっています。仮に人生100年時代が到来するとなると、65歳で定年退職したとしても、残り35年もあることを考慮しなくてはなりません。
「会社員の場合、55歳くらいから役職がなくなり、給与が下がりはじめ、定年時にピークの半分ほどになる人も多い。ライフプランのシミュレーションでは、多くの人が定年後にも働くことを想定するものの、実際にはアルバイトやパートなどの非正規雇用が中心となるため、収入は定年時よりもさらに低くなると考えておくとよいでしょう」と斎藤さん。
生活費は、体力の衰えや食事量の減少を考慮し、現役時代の5割~7割を想定しておくケースが多いようです。
若いうちから資産形成し、生涯独身の可能性が高くなったら保険の見直しを。
定年後には、資金を削りながら生活することを想定し、あらかじめ貯蓄しておくとよいでしょう。資産形成は、分散投資による運用、積み立てによる運用、終身保険の加入など、いくつかの選択肢があるので、自分に合ったものを選んでください。
結婚したり子どもが生まれたりして、ライフステージが大きく変わるのは平均30歳前後。そのころまでは、結婚する場合、しない場合の両方の可能性を考え、支出が増えても困らない程度の資産形成をしていくとベスト。ライフスタイルが変化しても手を付けなくていい資産があれば、老後も安心です。
30代後半から40代になり、生涯独身の可能性が高いと考えたら、そろそろ介護や認知症の保険を検討し、入院したり働けなくなったりしたときのために、医療保険も手厚くするとよいでしょう。
結婚しない老後には、「老後生活費の備え」と「コミュニティ」が大事!
老後は若いころのように働けないため、アクティブに働けるうちに資産形成をはじめておくのがおすすめ。病気などで医療費がかかったり、体力が衰えて今のように仕事ができなくなったりします。また、斎藤さんによると、ひとり暮らしの「寂しさ」も考慮したほうがいいとのこと。地域のコミュニティに参加したり、困ったときに頼れる人をつくったりと、人間関係も大事にすると、いざというときも安心です。
取材・文/栃尾江美 写真/Adobe Stock
斎藤 和孝
株式会社ベリーライフコンサルタント代表。ファイナンシャルプランナー。1964年、神奈川県横浜市生まれ。1987年に早稲田大学卒業。2005年、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士取得。2021年に結婚相談所「ベリーライフコンサルタント」を開業。趣味は釣り、バンド、野球。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※ 税務の取り扱いについては、2023年2月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。