出産・入園・入学などの内祝い。金額相場やお返しなどのマナーを解説。
結婚や出産、子どもの入園・入学などのおめでたいときに、喜びの気持ちを周囲に伝えて、その喜びを分かち合うことを「内祝い」といいます。内祝いで贈る品物の相場やマナー、ギフトを選ぶうえでの心構えなどについて、マナーアドバイザーの岩下宣子さんに伺いました。
目次
内祝いとはどんなもの?
内祝いを単に「いただいたお祝いへのお返し」と捉えている人は多いようです。ただ、本来の内祝いは、「身内でのお祝い」を意味していたといいます。
内祝いの由来と本来の意味。
一昔前は、結婚したり、赤ちゃんが生まれたり、病気が治ったりなどの「おめでたいこと」があると、家族をはじめ日ごろお世話になっている人たちを自宅に招きました。
「この子を授かりました」「元気になりました」といったお披露目や報告を兼ねて、食事をしながら一緒に祝い、「これからも私たちとのお付き合いをお願いします」とあらためて伝えたのです。また、お赤飯を炊いてご近所に配る内祝いもあったようです。
最近の一般的な内祝い。
最近の内祝いは、結婚・出産・入園・入学などへのお祝い金をいただいた方に対して贈る「お返し(返礼品)」を指すことが一般的です。
先述のような、おめでたいことを分かち合う「お福分け」の意味合いが強い風習は薄れつつあるようです。とはいえ、本来の内祝いの意味を踏まえ、「お返しをしなければいけない」という義務感ではなく、「見守っていてください」「これからもよろしくお願いします」という思いと日ごろの感謝を込めてお返しを贈るようにしたいですね。
一般的な内祝いの金額相場。
内祝いは、贈る相手(親族・友人・上司・同僚)などによって相場が異なります。だいたいの相場を知っておくと、感謝の気持ちも形にしやすくなるでしょう。
目上の人には3分の1が目安。
職場の上司やお世話になっている年配の知人など、目上の人への内祝いは、お祝いとしていただいた金額の「3分の1」が目安になります。3万円なら1万円。目上の方だからといってあまり高額な返礼品を贈ると、かえって気を使わせてしまうので注意しましょう。
友人・同僚には半額が目安。
友人や同僚など対等な関係にある人への内祝いなら、お祝いとしていただいた金額の「2分の1(半返し)」が目安になります。
兄弟姉妹、親戚には2分の1~3分の1が目安。
年上の兄弟姉妹には、お祝いとしていただいた金額の「3分の1」が、年下の兄弟姉妹なら「2分の1」程度が目安になります。親族へも「2分の1~3分の1」を、日ごろからの関係性を考慮して決めるとよいでしょう。
両親や祖父母には、本来の「内祝い」をしてみては。
「3分の1」が目安になりますが、一般的に、両親や祖父母からのお祝いは高額なことが多いため、相場にこだわらなくとも問題ないでしょう。また、かしこまって内祝いの品を選ぶよりも、食事の場を設けるなど、本来の意味での内祝いをしたほうが喜ばれるかもしれません。
たとえば出産の場合、生まれた赤ちゃんを囲んで一緒に誕生を喜び合うことで、お互いにとってかけがえのない時間になるはずです。
生まれてから1歳までの行事・風習を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
内祝いで注意すべきこと。
ギフトを選ぶときには、相手の立場に立って「何を贈られたらうれしいかな?」と考えることが大切です。相手の好みや趣味などから、思いやりの心と観察力、想像力の3つをもって返礼品をピックアップしましょう。たとえば、内祝いには「飲食をともにして喜びを分かち合う」という由来がありますから、食べものは内祝いに適した返礼品だといえます。
なお、職場の上司をはじめ目上の人にだけは避けたい返礼品があります。シャツなどの肌着は「日常になくてはならないもの=生活に困っている方にあげるもの」とされ、贈るのは失礼にあたります。靴下やスリッパなど、足元につけるものもNGとされています。見下すものや踏みつけるものというイメージにつながるからです。
出産内祝いで知っておきたいマナー。
出産祝いは通常、生後7日~1か月ごろにいただきます。出産内祝いを贈る時期やその内容、気を付けるべきことをチェックしましょう。
出産内祝いを贈る時期。
出産祝いをいただいた日から3週間~1か月後くらいを目安に出産内祝いを贈りましょう。最近は律義な方が多く、お祝いをいただいてから1週間もたたないうちに内祝いを贈るケースもあるようですが、かえって「赤ちゃんが生まれたばかりなのに気を使わせてしまって」と相手を恐縮させてしまうかもしれません。
先述した期間内であれば、ゆっくり品物を選んでいても大丈夫です。
出産内祝いに贈るもの。
友人など親しい間柄の人には、その人に喜んでもらえるようなギフトを考えて贈るとよいでしょう。
赤ちゃんが生まれたときと同じ体重ぶんのお米や、赤ちゃんの顔をプリントしたお菓子など、直接会えなくても赤ちゃんの印象が伝わりやすい、ユニークな内祝いもいろいろと登場しています。また、高級なお砂糖やお塩など、自分ではなかなか買わないけれど日ごろの食卓で重宝するものも喜ばれます。
入園・入学内祝いのマナー。
入園・入学祝いは、内祝い(返礼品)を贈らないことがルール。なぜなら、入園・入学祝いは子どもに贈られるもので、本来は祝われた本人、つまり子どもから内祝いを贈らなければならないからです。
「経済力のない子どもはお返しをしなくてもいい」という解釈ですが、最近では、入園・入学祝いにも内祝いを贈る家庭があるようです。どうするかは相手との関係性の中で個別に判断するといいでしょう。
参考:三越伊勢丹「贈り物のしきたりとマナー」
入園・入学内祝いを贈る時期。
入園・入学祝いをいただいたら、すみやかに電話やお手紙で「気にかけてくださってありがとうございます」といったお礼のご連絡をしましょう。そのうえで、子どもを連れてお礼の訪問をする場合、または、内祝いの品物を贈る場合は1か月以内が目安になります。
入園・入学内祝いに贈るもの。
入園・入学祝いには5万円、10万円など高額なお金をいただくこともありますが、額面通り捉えて、目安に沿った価格の内祝いを贈ると、かえって気を使わせてしまいます。
それよりは、子どもを連れて直接ごあいさつに行ったり、入園・入学式の写真を同封したお手紙を渡したりするだけでも喜ばれるでしょう。また、相手に子どもがいる場合は、その子の入園・入学時に同様のお祝いを渡すことが一般的です。
相手の気持ちに応える、お金の準備を。
人生の大きな節目ともいえる結婚や出産などのライフイベントは、いつもお世話になっている人たちに、お礼の気持ちをしっかり伝える大切な機会でもあります。内祝いの本来の意味や正しいマナーを知ったうえで準備しておきましょう。
お祝いをいただいた際の「お礼を伝えたい」「一緒に祝いたい」という気持ちをカタチにするためには、そのためのお金が必要になります。いただいたお祝い金は貯蓄に回すなどして、お世話になっている人との「内祝いや冠婚葬祭など、お付き合いのための資金」にしておくと安心かもしれませんね。
子どもを育てながらの家計管理を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
写真/PIXTA
岩下 宣子
共立女子短期大学卒業。キッコーマン入社。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流小笠原清信氏のもとでマナーを学び、1985年、現代礼法研究所を設立。マナーデザイナーとして、企業・学校・商工会議所・公共団体などでマナーの指導・研修・講演と執筆活動を行う。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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